3行まとめ
- 体重1kgあたり0.1gのクレアチンを1回だけ、筋トレの2時間前・最中・直後に飲む条件と、プラセボ、何も飲まない条件を、男性11人で比べた。
- 2時間前に飲んだ条件で、ベンチプレスとスクワット(1RMの80%×6セット)の挙上総量がプラセボや何も飲まない条件より大きかった。ジャンプ、集中力テスト、気分、筋肉痛には差がなかった。
- ただし11人の小さな予備的研究で、プラセボは「2時間前」の条件にしかなく、本人が飲むタイミングを知っていた。毎日飲み続ける場合の結論にはならない。
日本語要約
目的
クレアチンを1回だけ飲むとき、筋トレに対して「いつ飲むか」で、その日の筋力・パワー、認知機能、疲労感、血液の指標が変わるかを調べた。
方法
身体活動的な男性11人(平均26.09歳、体重83.20kg)が、7日ずつ間を空けて5条件すべてを行うクロスオーバー試験。クレアチン一水和物(体重1kgあたり0.1g、500mLの水に溶かす)を、①トレーニング2時間前(CrB)、②セット間に分けて(CrD)、③トレーニング直後(CrF)に摂る3条件と、2時間前にプラセボ(マルトデキストリン)を摂る条件、何も摂らない条件。トレーニングはスミスマシンのベンチプレスとバックスクワットを1RMの80%で6セット(12・11・10・9・8・7回)。挙上総量を主要評価項目とし、ジャンプ(CMJ)、血液、気分(POMS)、数字抹消テスト、きつさ(RPE)、回復感、筋肉痛も測った。
結果
条件による差は、ベンチプレス(F = 4.91、ηp² = 0.33、p = 0.035)、スクワット(F = 33.22、ηp² = 0.77、p < 0.001)の両方で有意だった。2時間前(CrB)はプラセボと何も飲まない条件より挙上量が大きく、スクワットでは運動中(CrD)よりも大きかった。スクワットでは運動後(CrF)や運動中もプラセボより大きかった。ジャンプ、認知、気分、きつさ、回復感、筋肉痛には差がなかった。血液ではCK(筋損傷の目安)が運動後条件で、何も飲まない条件やプラセボより高く、クレアチニンは2時間前条件で低かった。
限界
参加者11人の予備的(パイロット)研究。プラセボは「2時間前」と同じタイミングにしかなく、運動中・運動後の条件では本人がタイミングを知っていたため、思い込みの影響を除けていない。食事は管理していない。7日間の間隔では筋内のクレアチンが元に戻りきらない可能性がある(持ち越し効果)。筋内のクレアチン量は測っていない。対象は男性のみ。1回だけ飲む実験なので、毎日飲み続ける場合には当てはめられない。
要約はKが論文を読んでまとめたものです。正確な内容は原文をご確認ください。
筋トレしている人への活かし方
この研究は「1回だけ飲んだ当日の効果」を見たもので、毎日飲み続ける場合の飲む時間の正解を示したものではありません。論文自身も、長く飲む場合はローディングとメンテナンス(1日3〜5gなど)が引き続き根拠のある方法だと書いています。
すでに毎日クレアチンを飲んでいる人が、無理に飲む時間を変える必要があるとまではいえません。飲み忘れを防げて、毎日続けられる時間に飲むのがいちばん大事です。
トレーニングの日に飲む時間を選べるなら、「トレーニングの2時間ほど前」は試してみてもよい選択肢の1つです。ただし効果には個人差があり、この研究も小規模です。
腎臓の病気がある人や薬を飲んでいる人は、サプリメントを始める前に医師に相談してください。
これはKの個人的な読み方で、医療的な助言ではありません。
本文の日本語訳
以下は原論文の本文(抄録・参考文献を除く)の日本語訳です。図は原文へのリンクにしています。[ ]内の数字は原文の参考文献番号です。
訳者注:原文の本文・表・抄録の間には、一部で食い違いがあるように見える箇所があります(例:考察では「運動中・運動後の摂取にはそのような効果はなかった」としていますが、結果ではスクワットで運動中・運動後の条件もプラセボより高い値でした。表2の記号の付き方も本文と一部一致しません)。本訳では原文のとおりに訳しています。統計解析の効果量の基準「0,14」は原文の表記ゆれと判断し「0.14」としました。
1. はじめに
クレアチン(Cr)(α-メチルグアニジノ酢酸)は、主に腎臓と肝臓で体内合成される[1,2]。しかしCrは、市販のCr製剤を摂取することで体外から補給することもでき、最も一般的な形態はクレアチン一水和物である[3]。具体的には、Cr摂取が筋内のCr貯蔵量、筋の形態(例:除脂肪量)、および機能的パフォーマンス(例:筋力、持久力)を高めることは、よく確立されている[3,4,5]。Crの補給方法は一般に、1日20gを5〜7日間摂るローディング期と、その後に筋内の高いCr濃度を保つため1日3〜5gを摂るメンテナンス期からなる[6]。最初のローディング期はCr貯蔵量を急速に増やすことを、続くメンテナンス量はCrの枯渇を防ぐことを目的としている[7]。
運動に対するCr補給のタイミングは、トレーニング効果を最大化するうえで重要な要因だといわれてきた[8]。Cr摂取タイミングが重要だという考えは、運動によって起こる生理的変化(血流の増加や輸送動態の変化など)が、組織への吸収と貯蔵を最適化しうるという仮定に基づいている[9]。しかし、特定のタイミング戦略を支持するエビデンスは、結果が一致しない少数の長期研究に限られている[10,11,12]。たとえばAntonioとCiccone[10]は、4週間のレジスタンストレーニングで、運動前よりも運動後にCrを摂取したほうが、除脂肪量と筋力の向上が大きかったと報告した。しかし彼らの結果は、プラセボ群がないこと、標本数が少ないこと、マグニチュード・ベースド・インファレンスに頼っていることによって制約を受けている。一方、Candowら[11]は、高齢者を対象とした32週間の介入で、筋力と筋肥大に関して運動前摂取と運動後摂取の間に明確な違いを見いだした。より最近では、Mills、Candow、Forbes、Neary、Ormsbee、Antonio[12]が、トレーニング中のCr補給がプラセボと比べて筋力と持久力を高めることを示したが、従来の運動前・運動後の比較群がないため、トレーニング中摂取の有効性について確定的な結論は出せない。
レジスタンス運動が筋へのCr蓄積を促すことは知られているが[13,14]、タイミングの有効性に関する現在のエビデンスは、2時点の比較を検討した長期介入にすべて限られている。そこで本研究では、レジスタンストレーニングのセッションに対する単回のCr摂取のタイミングが、身体活動的な男性の急性の筋力・パワー発揮、認知機能、知覚的反応、および選択した血液バイオマーカーに影響するかを調べた。運動前に摂取すると、血漿Cr濃度のピークが運動による骨格筋の血流増加と重なるため[8]、運動前のCr補給が、その後のパフォーマンスと認知の指標を最も大きく高めるという仮説を立てた。
2. 材料と方法
2.1. 参加者
本研究に必要な標本数は、G*Powerソフトウェア(バージョン3.1.9.4、キール大学、ドイツ・キール)を用いて事前に推定した。5条件の反復測定ANOVAによるクロスオーバー研究、α = 0.05、検出力 = 0.80とし、ベンチプレス(BP)のパフォーマンスにおけるレジスタンス運動前後のCr摂取タイミングに関する先行研究[14]に基づいて、条件の中程度の効果(効果量 f = 0.39)を検出し、実際の検出力84%に達するには、最低10人の参加者で十分と推定された。脱落の可能性を考慮し、身体活動的な男性11人(平均 ± SD;年齢:26.09 ± 4.39歳;身長:176.36 ± 7.24 cm;体重:83.20 ± 9.79 kg)を本研究の参加者として募集した。参加者は次の基準を満たす場合に組み入れ対象とした:(1)非喫煙者で、実験期間中および研究開始前の少なくとも1か月間、飲酒や抗炎症薬の使用をしていないこと、(2)筋骨格系の傷害がないこと、(3)応用スポーツ科学の現場で用いられる実践的な推奨[15,16]に従い、Hooper Indexの下位尺度得点がすべて4以下、または合計得点が16以下の状態が3日連続で続くことで定義される、安定した回復状態を示していること。薬を服用している者、研究開始前4週間以内にクレアチン一水和物またはクレアチンを含むサプリメントを摂取した者、菜食を行っている者、腎疾患または肝疾患の既往がある者は除外した。参加者全員に、起こりうるリスクと利益を含む研究手順を詳しく説明し、参加前に書面によるインフォームド・コンセントを得た。研究はヘルシンキ宣言に従って実施し、プロトコルは地域の研究倫理委員会により承認された(CPP: N° 0414/2022)(承認日:2022年8月26日)。
2.2. 実験デザイン
本研究は、パイロット、ランダム化、プラセボ対照クロスオーバー試験であり、パン・アフリカ臨床試験登録(PACTR202309597156293、2023年9月18日)への事前登録ののち、ランダム化クロスオーバー試験のためのCONSORT(Consolidated Standards of Reporting Trials)ガイドライン[17]に従って実施した(補足表S1)。本研究は、筋力トレーニングのセッションと組み合わせて、運動開始に対して異なる時点で投与したCr補給の急性効果を調べるよう計画した。主要評価項目は筋力パフォーマンスで、ベンチプレスとバックスクワットで挙上した外部負荷の総量として評価した。副次的・探索的評価項目には、カウンタームーブメントジャンプのパフォーマンス、認知機能、知覚的反応、気分状態、および選択した血液バイオマーカーを含めた。
測定セッションの1週間前に慣れのためのセッションを行った。このセッションでは、学習効果の可能性を最小限にするため、本研究で用いるすべての測定手順と運動技術に参加者を慣れさせた。同日に参加者の身体計測値を測定し、各参加者の相対投与量を計算し、BPとバックスクワット(BSQ)の1回最大挙上重量(1-RM)を決定した。BPとBSQの1-RMはいずれもMcGuiganの方法[18]で決定した。簡単に述べると、参加者は予測1-RMの50%で4回のウォームアップセットを行った。続いて、予想1-RMの約70%から始めて5〜10kgずつ増やしながら、1-RMに達するまで1-RMの試技を続けた。セット間には2分の休息を設けた[10]。補助なしで安全に挙上できた最も重い負荷を1-RMとした。実験セッションを通じて、参加者は4つの補給条件と1つの非補給コントロール条件を含む5条件で測定を受けた。補給セッションでは、参加者はクレアチン一水和物(Eric Faver's Nutrition Expert Creatine Pro Zero;EU、フランス、Villecheneuve および Puteaux)またはプラセボを体重1kgあたり0.1gの用量で、500mLの水に溶かして摂取した。Cr補給は筋力トレーニングのセッションに対して3つの異なる時点で行った:(1)運動前(CrB):トレーニングの2時間前に全量を1回でまとめて摂取、(2)運動中(CrD):全量をトレーニングセッション全体に均等に分け、セット間に等量ずつ摂取、(3)運動後(CrF):トレーニングセッション終了直後に全量を摂取。プラセボ条件(PL)では、参加者は運動前条件と同じ摂取タイミング(トレーニングの2時間前に1回でまとめて摂取)で、同じ容量のプラセボ溶液(コーンスターチ由来マルトデキストリン、体重1kgあたり0.1g)を摂取した。識別を防ぎ盲検化を確実にするため、サプリメントは不透明で表示のない容器に入れ、独立した担当者が取り扱った。コントロール条件では何も摂取しなかった。各実験条件で、参加者は同一の標準化された筋力運動セッションを行った。セッションはベンチプレス、次にバックスクワットの順で行う2種目からなった。各種目は、先行研究[19]に基づき、事前に測定した各参加者の1-RMの80%で6セット行い、反復回数はセットごとに減らした(12、11、10、9、8、7回)。セット間休息は2分に固定し、種目間には3〜4分の休息を設けた。すべてのセッションは、正しいフォームと規定のプロトコルの遵守を確保するため、同じ研究者が監督した。
参加者全体で条件の順序をバランスよくし、割り付けと順序のバイアスの可能性を最小限にするため、順位に基づく割り付けを用いた構造化ブロックランダム化の手順で、実験条件の順序を参加者に無作為に割り付けた。具体的には、Microsoft Excel 2007(米国ワシントン州レドモンド)のRAND()関数を使って各参加者に乱数を割り当てた。次に、その乱数に基づいて参加者を昇順に並べた。処置条件はこの順位に従って割り付けた。具体的には、参加者を昇順の順位でコントロール、PL、CrB、CrD、CrFに割り付け、コントロール群はブロックサイズ3、その他の群は2人のブロックとした。急性のCr投与量として0.1 g·kg−1を選んだのは、筋力運動と組み合わせたときに筋パフォーマンスを高める効果が示されていたためである[11]。運動中のパフォーマンスは、事前に測定した各参加者の1-RMの80%で行ったベンチプレスとバックスクワットの全セットで挙上した外部負荷の総量(kg)として評価した。身体パフォーマンスを評価するため、参加者は下半身のパワーを評価するカウンタームーブメントジャンプ(CMJ)テスト[20]と、筋力パフォーマンスを評価する反復ベンチプレス(BP)[21]およびバックスクワット(BSQ)[22]テストを行った。これらの評価はトレーニングセッション終了後に行った。BPとBSQのテストはスミスマシン(Atlantis、カナダ・ケベック州ラヴァル)で行い、本研究では両テストとも良好〜優秀な再テスト信頼性を示した(級内相関係数〔ICC〕はそれぞれ0.86と0.98)。CMJのパフォーマンスはMyotest Pro加速度計システム(Myotest SA、スイス・シオン)で評価し、本研究ではこれも優秀な再テスト信頼性を示した(ICC 0.97)。
測定の直後に、肘正中静脈から静脈血(10mL)をヘパリン入りの採血管に採取し、筋損傷マーカー(クレアチンキナーゼ〔CK〕、乳酸脱水素酵素〔LDH〕、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ〔AST〕、アラニンアミノトランスフェラーゼ〔ALT〕、アルカリホスファターゼ〔ALP〕)、腎機能(クレアチニン)、電解質濃度(Na+とK+)を評価した。検体は氷浴に入れ(採取後30分)、ただちに2500 rpm(× g)で10分間遠心分離した。測定条件のばらつきを避けるため、すべての検体を同じ測定バッチで分析した。CKとLDHは340 nm速度法で測定した。血液検体はELITechGroupのキット(フランス・Puteaux)で分析した。
採血のあと、参加者は主観的評価と認知機能の評価を受けた。内容は、Borgスケール[23]による主観的運動強度(RPE)、気分プロフィール検査(POMS[24])による気分状態の評価、数字抹消テスト(DCT)[25]による認知パフォーマンスの評価である。これらの評価が終わって5分後に、参加者は知覚的回復スケール(PRS;[26])で主観的な回復状態を、遅発性筋肉痛(DOMS;[27])の視覚的アナログスケールで遅発性筋肉痛を報告した(図1)。条件間の十分な回復を確保し、摂取した単回のCrの影響をなくすため、条件の間に7日間のウォッシュアウト期間を設けた[28]。この期間は単回摂取後のCrの残存をなくすのに十分であるとされている[28,29]。実験期間中、参加者には普段の食事と睡眠習慣を保つよう求めた。概日リズムの影響を避けるため、すべての測定セッションは同じ時間帯(18時〜21時)に行った。
図1:研究の概要図。(図は原論文で見られます:原文の図1)
2.3. 統計解析
統計解析はSPSSソフトウェア バージョン27.0.1で行った。データは、正規分布する変数は平均 ± 標準偏差で、正規分布しない変数は中央値と四分位範囲で示した。データ分布の正規性はShapiro–Wilk検定で、分散の等質性はLevene検定で確認した。球面性はMauchly検定で評価し、BPとBSQで見られたように球面性の仮定が満たされない場合はGreenhouse–Geisser補正を適用した。ベンチプレス(BP)とバックスクワット(BSQ)で挙上した外部負荷の総量として評価した筋力パフォーマンスを、本研究の主要評価項目とした。CMJのパフォーマンス、生化学マーカー、気分状態、認知パフォーマンス、RPE、PRS、DOMSを含むその他すべての評価項目は、副次的または探索的評価項目とした。正規分布する変数(BP、BSQ、ALP、K+、Na+、活気、DCT、DOMS)には、条件の効果を調べるため一元配置反復測定分散分析(ANOVA)を用いた。有意な主効果が見られた場合は、条件間の対ごとの差を特定するため、Bonferroni補正した事後比較を行った。効果量は偏イータ二乗(ηp2)として計算した。効果量(ηp2)は差の大きさを評価するために計算し、0.01、0.06、0.14をそれぞれ小、中、大の効果量とする基準を用いた[30]。正規分布しない変数(CMJ、CK、LDH、ALT、AST、クレアチニン、疲労、怒り、抑うつ、緊張、混乱、RPE、PRS)には、Friedman検定を用い、事後分析にはWilcoxonの符号付き順位検定を用いた。差の大きさを評価するため、WilcoxonのZ値と観測総数(N)を用いて順位双列相関係数(r)を計算し(r = Z/√N)、0.1〜0.3未満を小、0.3〜0.5未満を中、0.5以上を大と分類した[31]。統計的有意水準は p < 0.050 とした。第1種の過誤のリスクを減らすため、筋力パフォーマンス(BPとBSQ)を主要評価項目とし、パワー発揮、生理的変数、心理的変数を副次的・探索的評価項目として扱う階層的アプローチをとった。
主な評価項目について事後的な検出力も計算し、補足表S2に示した。これらの計算は、観測された効果量、標本数、反復条件の数、α = 0.05、各評価項目に用いた統計モデルに基づき、G*Powerソフトウェアで行った。事後的な検出力の推定値は観測された効果に左右され、小さな標本では不安定になりうるため、これらの分析は記述的なものとみなし、研究の感度を示すためだけに用い、標本数が十分であることの根拠とはしなかった。
3. 結果
3.1. 身体パフォーマンス
3.1.1. 筋力パフォーマンス
BPのパフォーマンスには条件の有意な効果があった(F(1.35,13.54) = 4.91;ηp2 = 0.33;p = 0.035)。事後分析では、CrBはPL(95% CId = 2.97〜18.85;d = 0.56;p = 0.006)およびコントロール(95% CId = 0.97〜9.94;d = 0.28;p = 0.014)よりも挙上重量が大きかった。さらに、CrD(95% CId = 1.18〜13.36;d = 0.38;p = 0.016)とコントロール(95% CId = 1.67〜9.24;d = 0.29;p = 0.004)の条件の値は、PLよりも高かった(図2)。
図2:身体活動的な男性(n = 11)の各条件におけるベンチプレス(BP)のパフォーマンス。値は平均 ± SD。(原文の図2)
BSQのパフォーマンスには条件の有意な効果があった(F(1.91,19.06) = 33.22;ηp2 = 0.77;p < 0.001)。事後分析では、CrBはCrD(95% CId = 0.57〜10.53;d = 0.20;p = 0.026)、PL(95% CId = 6.67〜19.69;d = 0.49;p < 0.001)、コントロール(95% CId = 3.69〜9.56;d = 0.24;p < 0.001)よりも値が高かった。さらに、CrFはPL(95% CId = 4.59〜14.86;d = 0.37;p < 0.001)およびコントロール(95% CId = 0.06〜6.31;d = 0.12;p = 0.045)よりも値が高かった。加えて、CrD(95% CId = 4.69〜10.59;d = 0.30;p < 0.001)とコントロール(95% CId = 2.61〜10.48;d = 0.25;p = 0.001)の条件では、PLと比べて高い値が記録された(図3)。
図3:身体活動的な男性(n = 11)の各条件におけるバックスクワット(BSQ)のパフォーマンス。値は平均 ± SD。(原文の図3)
3.1.2. CMJのパフォーマンス
CMJには条件の効果はなかった[パワー(χ2(4) = 1.38;p = 0.85)、高さ(χ2(4) = 4.95;p = 0.29)、力(χ2(4) = 2.94;p = 0.57)、速度(χ2(4) = 4.15;p = 0.39)](表1)。
| CrB | CrD | CrF | PL | コントロール | |
|---|---|---|---|---|---|
| 高さ(cm) | 30.20 ± 31.50 | 30.60 ± 15.50 | 30.60 ± 15.50 | 31 ± 11.20 | 35.04 ± 10.10 |
| パワー(W/kg) | 47.50 ± 45.70 | 47.10 ± 26.60 | 46.40 ± 15.30 | 53.50 ± 13.10 | 48.80 ± 16.10 |
| 力(N/kg) | 25.10 ± 6.70 | 24.30 ± 6.10 | 24.40 ± 3.10 | 26.70 ± 7 | 24.80 ± 7.80 |
| 速度(cm/s) | 243 ± 111 | 249 ± 79 | 250 ± 43 | 267 ± 31 | 263 ± 38 |
統計量はすべて中央値/IQR。CrB:運動前クレアチン、CrD:運動中クレアチン、CrF:運動後クレアチン、PL:プラセボ。
3.2. 血液指標
Friedman検定では、CKに条件の有意な効果が見られた(χ2(4) = 12.22;p = 0.016)。Wilcoxon検定では、CKの値はコントロール条件でCrD条件(Z = −2.31;p = 0.021;r = −0.70)およびCrF条件(Z = −2.49;p = 0.013;r = −0.75)よりも低かった。さらに、CK濃度はPL条件でCrF条件よりも低かった(Z = −2.04;p = 0.041;r = −0.62)。また、クレアチニンにも条件の有意な効果があった(χ2(4) = 17.75;p = 0.001)。Wilcoxonの符号付き順位検定では、クレアチニン濃度はCrBでCrD(Z = −2.13;p = 0.033;r = −0.64)、CrF(Z = −2.934;p = 0.003;r = −0.88)、コントロール条件(Z = −2.31;p = 0.021;r = −0.70)よりも有意に低かった。加えて、PL条件はCrF条件よりもクレアチニン濃度が低かった(Z = −2.13;p = 0.033;r = −0.64)。一方、LDH濃度(χ2(4) = 3.34;p = 0.50)、ALP濃度(F(4,7) = 3.89;ηp2 = 0.69;p = 0.057)、ALT(χ2(4) = 6.65;p = 0.16)、AST(χ2(4) = 3.42;p = 0.49)、K+(F(4,7) = 1.54;ηp2 = 0.47;p = 0.29)、Na+(F(4,7) = 2.26;ηp2 = 0.56;p = 0.16)には条件の有意な効果はなかった(表2)。
| CrB | CrD | CrF | PL | コントロール | 統計量 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| CK(U/L)# | 384 ± 787 | 580 ± 351 | 433 ± 686 | 400 ± 585 £ | 288 ± 387 * | MED/IQR |
| LDH(U/L)# | 240 ± 201 | 234 ± 23 | 226 ± 24 | 232 ± 55 | 209 ± 80 | MED/IQR |
| ALP(U/L)† | 155 ± 100.64 | 199.09 ± 91.85 | 226.63 ± 79.38 | 190.09 ± 89.65 | 222.36 ± 64.79 | M(SD) |
| ALT(U/L)# | 28/19 | 30/17 | 28/15 | 26/11 | 27/6 | MED/IQR |
| AST(U/L)# | 27 ± 17 | 32 ± 10 | 31 ± 15 | 31 ± 13 | 35 ± 12 | MED/IQR |
| K+(mmol/L)† | 4.19 ± 0.28 | 4.22 ± 0.34 | 4.25 ± 0.40 | 4.29 ± 0.43 | 3.93 ± 0.41 | M(SD) |
| Na+(mmol/L)† | 138.62 ± 5.05 | 142.02 ± 5.54 | 141 ± 5.91 | 138.51 ± 4.08 | 138.27 ± 4.05 | M(SD) |
| クレアチニン(μmol/L)# | 96.30 ± 32.70 & | 105.40 ± 33.60 | 111.70 ± 30.10 | 90 ± 42.40 | 105.80 ± 15.20 ß | MED/IQR |
†:正規分布する変数、#:正規分布しない変数、*:CrDおよびCrFと有意差(p < 0.05)、£:PLと有意差(p < 0.05)、&:CrD、CrF、コントロールと有意差(p < 0.05)、ß:CrFと有意差(p < 0.05)。CK:クレアチンキナーゼ、LDH:乳酸脱水素酵素、ALP:アルカリホスファターゼ、ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ、AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、M:平均、SD:標準偏差、MED:中央値、IQR:四分位範囲。(訳注:記号の付き方は原文の表のとおりで、本文の記述と一部一致しないように見える箇所があります。)
3.3. 気分プロフィール検査(POMS)
Friedman検定では、疲労–無気力(χ2(4) = 6.84;p = 0.15)、怒り(χ2(4) = 2.06;p = 0.73)、活気(F(4,7) = 0.38;ηp2 = 0.18;p = 0.82)、混乱(χ2(4) = 2.89;p = 0.58)、抑うつ(χ2(4) = 3.79;p = 0.44)、緊張(χ2(4) = 1.40;p = 0.84)のいずれにも、条件の有意な効果はなかった(表3)。
| CrB | CrD | CrF | PL | コントロール | |
|---|---|---|---|---|---|
| 疲労(a.u)# | 6 ± 5 | 10 ± 10 | 7 ± 10 | 3 ± 6 | 6 ± 8 |
| 怒り(a.u)# | 9 ± 10 | 9 ± 5 | 6 ± 16 | 6 ± 15 | 7 ± 18 |
| 活気(a.u)† | 22.90 ± 6.30 | 20.18 ± 7.57 | 21.90 ± 6.18 | 21.18 ± 5.79 | 23.18 ± 4.75 |
| 混乱(a.u)# | 6 ± 4 | 8 ± 7 | 6 ± 5 | 5 ± 11 | 6 ± 11 |
| 抑うつ(a.u)# | 4 ± 12 | 3 ± 7 | 6 ± 13 | 4 ± 16 | 3 ± 21 |
| 緊張(a.u)# | 8 ± 8 | (原文で空欄) | 8 ± 7 | 7 ± 12 | 7 ± 15 |
a.u:任意単位。
3.4. 数字抹消テスト
DCTの得点には条件の有意な効果はなかった(F(4,7) = 3.98;ηp2 = 0.69;p = 0.054)(表4)。
| CrB | CrD | CrF | PL | コントロール | |
|---|---|---|---|---|---|
| DCT(a.u)† | 57.09 ± 10.74 | 58.36 ± 7.66 | 62.45 ± 9.36 | 63.45 ± 7.27 | 65.91 ± 5.80 |
| RPE(a.u)# | 4 ± 5 | 5 ± 2 | 3 ± 2 | 4 ± 2 | 3 ± 4 |
| PRS(a.u)# | 6 ± 1 | 7 ± 4 | 6 ± 1 | 6 ± 3 | 7 ± 2 |
| DOMS(a.u)† | 4.45 ± 1.57 | 4.54 ± 2.10 | 4.54 ± 2.65 | 5 ± 2.44 | 3.64 ± 2.20 |
DCT:数字抹消テスト、RPE:主観的運動強度、PRS:知覚的回復スケール、DOMS:遅発性筋肉痛。
3.5. RPE、PRS、DOMS
Friedman検定では、RPE(χ2(4) = 9.08;p = 0.06)、PRS(χ2(4) = 3.64;p = 0.46)、DOMSの得点(F(4,7) = 1.31;ηp2 = 0.43;p = 0.35)に条件の効果はなかった(表4)。
4. 考察
このランダム化クロスオーバーのパイロット研究では、レジスタンストレーニングのセッションに対する単回のCr摂取のタイミングが、身体活動的な男性の急性のパフォーマンス、または生理的・知覚的反応に影響するかを調べた。主な結果は、運動前のCr摂取(CrB)が、PLおよび非補給のコントロール条件と比べて、BPとBSQの両方で筋力パフォーマンスを有意に高めたことである。逆に、運動中(CrD)や運動後(CrF)のCr摂取では、そのようなエルゴジェニック(運動能力向上)効果は得られなかった。さらに、Crのタイミングは、CMJのパフォーマンス、認知機能、POMS、RPE、PRS、DOMSを変化させなかった。血中バイオマーカーについては、急性の変化はCrFでのCK濃度の上昇とCrBでのクレアチニン濃度の低下に限られた。まとめると、ローディング期を用いない場合、トレーニング前にクレアチンを摂取することが最も一貫した急性の筋力上の利益をもたらす可能性があり、神経筋のパワー、認知の結果、主観的な回復への影響は限られていることがデータから示される。実践的には、単回のクレアチン投与を用いるアスリートは、急性の筋力パフォーマンスを高めることが主な目的の場合、レジスタンストレーニングの約2時間前に摂取することで利益を得られる可能性がある。
いくつかの研究や総説がCrのタイミングの潜在的な影響を強調してきたが[4,8,32]、タイミングを決めた長期のCr投与の有効性を検討した原著研究は少なく、結果もまちまちである[10,11,12]。数週間にわたるトレーニングでは、Crを運動前よりも運動後に一貫して摂取したほうが、筋量と筋力の適応が大きいことを示すエビデンスがある[8,10,11]。対照的に、Crをトレーニング全体に分散して摂ることで明確な筋力向上が得られたことを示すエビデンスもある(Mills、Candow、Forbes、Neary、Ormsbee、Antonio[12])。筋力運動前後のCr摂取の長期効果に関するエビデンスは2時点の比較に頼っているが、本研究は、3つの時点(前・中・後)を用いて、筋力トレーニングのセッション前後のCr摂取の急性効果を扱った初めての研究である。運動前の投与で見られた明確なエルゴジェニック上の利点は、骨格筋の血流動態で説明できる可能性が高い。運動前にCrを与えると、血漿Cr濃度の上昇が、運動中に起こる血流の増加と重なる[8]。レジスタンス運動中のこのような血流動態と毛細血管灌流の増加は、運動している筋への栄養素の運搬、保持、代謝を高めうる[33]。このような急性の動態の一致は、運動前の摂取が運動中や運動後のプロトコルよりも効果的に筋のCr利用能を最大化するという生理学的モデルを支持する[8]。しかし、このエルゴジェニック反応の最終的な大きさは、個人の生物学的特性に左右される可能性がある[34]。実際、急性のCr補給には個人と処置の交互作用があることを示すエビデンスがあり、ある反応者は、ベースラインのクレアチンリン酸(PCr)濃度が最も低く、タイプII線維の割合が最も大きく、負荷前の筋線維横断面積が最も大きいという生物学的特性をもっていた[34]。これらの要因はCrのエルゴジェニックな可能性を左右し、研究間の結果の一致(訳注:原文は convergence)を部分的に説明しうる。この広く不均一な文献の中で、本研究の結果は急性・単回投与の時間軸を切り出し、長期的な蓄積が起こる前に、運動直前のCr投与が急性のパフォーマンスに明確な利点をもたらすことを示している。
血中の生化学マーカーでは、血中CKとクレアチニン濃度にわずかな変化が見られた一方、肝臓、代謝、電解質の全般的なプロフィールはまったく安定していた。運動後のCr摂取後に観察されたCKの上昇は、構造的な筋損傷の悪化というよりも、回復初期のクレアチン–クレアチンリン酸の代謝回転の変化とCK酵素活性の亢進を反映している可能性が高い[35]。Cr補給は筋損傷を和らげるとしばしば提唱されてきたが、先行研究ではCK反応への効果は一貫していない[36,37]。こうした生化学的変動の大きさは、トレーニング状況や運動の特性に影響される可能性がある。トレーニング経験の少ない人は、トレーニングを積んだ人よりもCrの取り込みが大きく、補給への反応も大きいようであり[38,39]、トレーニングしていない集団の結果をレジスタンストレーニング経験者に一般化することには限界がある。全体として、結果は、Crのタイミングが筋損傷に明確な影響を与えずに急性の生化学的反応に影響しうることを示唆しており、回復関連のバイオマーカーを変えることよりも急性の筋力パフォーマンスを高めることが目的の場合に、運動前のCr摂取が有効でありうるという考えを補強する。
クレアチニンは、骨格筋のクレアチンとクレアチンリン酸の代謝回転から生じる代謝副産物である[40]。本研究では、クレアチニンはCrB条件で、CrD、CrF、コントロール条件よりも低かった。この結果は、Cr補給と運動が血中クレアチニン濃度に影響しうることを示唆した先行研究[13]と部分的に一致する。しかし、これらの変化の解釈は慎重に行うべきである。血漿クレアチニンはその産生と腎臓からの排泄のバランスを反映し、腎機能の指標として広く用いられている[2]。重要なのは、運動後のクレアチニン濃度は、特定の代謝メカニズムを反映するというよりも、水分状態、腎臓での処理、運動によるストレス、採血のタイミングなど、複数の要因に影響されうることである[41]。CrDとCrFで観察された高いクレアチニン濃度を、ATP再合成が変化した直接の証拠と解釈すべきではない。高強度運動は筋の代謝回転の亢進を通じてクレアチニンの増加に寄与しうるが[42]、本データでは根底にあるメカニズムを確かめることはできない。したがって、これらの結果は記述的なものとして解釈すべきであり、直接の生理学的測定がない以上、メカニズムの説明はいずれも推測の域を出ない。
Cr摂取の1日量と期間がCr貯蔵の速度と程度を左右することはよく知られている[43]。用量に関しては、本研究の急性・単回投与のデザインは、筋の飽和に関して特有の代謝上の考慮点をもたらす。ヒトの1日のCr分解量は約1.6%(約2g)であることから[44]、本研究の急性投与量は、おそらく基礎的な維持の需要を満たすのに十分だった。しかし、参加者のベースラインの筋内Cr貯蔵量が多かった場合、すぐにパフォーマンスを変化させる能力は弱められていた可能性がある[45]。この飽和効果の可能性が、認知機能と知覚指標に変化が見られなかったことを説明していると考えられる。さらに、同様の急性クロスオーバー研究の時間設定に合わせ、7日間のウォッシュアウト期間を用いた[28,29]。この期間はトレーニングの継続性と参加者の遵守を保つための実際的な妥協であるが[46]、筋内クレアチン貯蔵量が完全に元に戻るには、摂取中止後4〜6週間を要する可能性がある[3,47]。したがって、急性の単回投与の使用は、長期補給のプロトコルと比べてクレアチンの大きな蓄積が起こる可能性を減らしうるものの、測定ブロック間の持ち越し効果の可能性を完全には排除できず、考慮が必要である。本研究の結果を解釈する際にはこの問題を考慮すべきであり、今後のクロスオーバー研究では、より長いウォッシュアウト期間か、筋クレアチン濃度の直接評価を検討すべきである。
補給期間については、Cr補給のエルゴジェニック効果を得るには「ローディング期」が不可欠だというのが、よくある誤解である[48]。この点について、先行研究では、適応を加速・増強するためにCrローディングとレジスタンストレーニングを組み合わせることの有効性が確立されている[13,14]。本研究では、タイミングの効果は最初のローディング期(すなわち最初の2日間)に最も顕著で、筋のチャネルが飽和すると無関係になりうるという仮説に基づき、1回のトレーニングセッションを用いた[43]。しかし、筋のCrは測定していないものの、ローディングなしの単回急性投与では、長期補給の効果を再現できない可能性があるようだ。高用量の単回Cr(すなわち0.35 g/kg)が代謝の変化と疲労に関連した認知の低下を回復させうることを考えると、これは重要である可能性がある[28]。一方、いくつかの評価項目で見られた大きなばらつきは、小さくても意味のある効果に対する感度を下げ、それによって第2種の過誤のリスクを高めた可能性が高い。したがって、有意でなかった結果、特に副次的評価項目の結果は、効果が本当にないことよりも感度の限界を反映している可能性があるため、慎重に解釈すべきである。
我々の知る限り、本研究は、レジスタンストレーニングのセッション前後にタイミングを決めて単回の急性Cr補給を行ったあとの身体パフォーマンス、認知機能、知覚的回復を同時に調べた初めての研究である。結果は急性の筋力パフォーマンスに対するトレーニング前投与の独自の価値を強調するものの、いくつかの限界が一般化の可能性を左右する。本実験の結果は、筋力とパワーの大きな向上を引き出すにはローディング期間が必要であることを裏付ける可能性がある[47]。主要な筋力評価項目について事前の検出力の要件を満たしたものの(補足資料参照)、本研究は、5つの複雑な実験条件で評価した小規模なコホート(n = 11)を特徴とするパイロット試験である。したがって、結果は慎重に解釈すべきであり、より大きな標本での確認なしに一般化すべきではない。プラセボ条件を含めたものの、それがプラセボによる効果を実質的に統制できたのは運動前摂取の条件だけであった。対照的に、運動中と運動後のクレアチン条件では、参加者は必然的に補給のタイミングを知っており、そのことが盲検化と期待効果を交絡させ、パフォーマンスや知覚的反応に影響した可能性がある[49]。参加者には普段の食事を続けるよう求めたものの、本研究の結果は食事統制がないことによっても制約を受ける。参加者の栄養摂取のばらつきが、ベースラインのCr貯蔵量と代謝反応に影響した可能性があり、結果の解釈の際に考慮すべきである。ベースラインの貯蔵量が少ない人は一般に大きな増加を示す一方、飽和に近い人は反応が弱い[8]。これはクロスオーバーデザインで特に重要であり、期間の間のクレアチン貯蔵量の変動が、さらなるばらつきと持ち越し効果の可能性をもたらしうる[50]。メカニズムの観点からは、神経筋の活性化、筋線維の形態や動員、筋タンパク質の代謝回転、サテライト細胞の活動、成長因子のシグナル伝達、ホルモン反応、酸化ストレス、炎症マーカーの直接測定はいずれも行っておらず、観察された効果の根底にある生理学的経路への洞察は限られる。今後のメカニズム研究では、タイミングに関連した筋Cr含有量の変化が、Cr取り込みの亢進によるものか筋内保持の増加によるものかを、トレーサー注入法やマイクロダイアリシス法などを用いて明らかにすることを目指すべきである。最後に、運動中のCr摂取と、1日のさまざまな時刻にトレーニング前後で摂取したCrとを比較するさらなる研究は、観察された効果が運動の時間帯に特有のものなのか、より広いタイミング依存の過程を反映しているのかを明らかにする助けになるだろう。
5. 結論
結論として、このランダム化クロスオーバーのパイロット研究は、身体活動的な男性では、筋力運動セッションの前に単回のクレアチンを摂取することが、運動中や運動後のクレアチン摂取、プラセボ摂取、補給なしと比べて、急性の筋力パフォーマンスの向上と関連することを示唆している。これらの効果は筋力関連の評価項目に特有であり、検討した急性条件では、クレアチンのタイミングはパワー発揮、認知機能、疲労と回復の知覚指標に影響しなかった。とはいえ、結果は探索的なものであり、より大きな標本で確認すべきである。さらに、完全に対応したプラセボ対照の構造がないため、観察されたタイミングの効果は盲検化と期待によるバイアスで交絡している可能性があり、結果は慎重に解釈すべきである。
プロトコルが急性のものであり、単回のクレアチン投与を用いたことから、本研究の結果を長期の補給方法に当てはめるべきではない。長期補給では、より広いパフォーマンスと回復の適応を最大化するうえで、ローディングとメンテナンスのプロトコルが引き続きエビデンスに基づく方法である。今後の研究では、これらのタイミングに関連した効果が、反復投与でも、また女性、高度にトレーニングされたアスリート、身体活動の少ない人など異なる集団でも続くかを調べるべきである。
謝辞・その他(原文より)
謝辞:研究への貴重な貢献をしてくれたすべての参加者、ならびにチュニジア・ケフのケフ地域病院の検査室に感謝する。
倫理審査:本研究はヘルシンキ宣言に従って実施され、南部人保護委員会(CPP: N° 0414/2022)により承認された(承認日:2022年8月26日)。インフォームド・コンセント:研究に参加したすべての対象者からインフォームド・コンセントを得た。
データの利用可能性:本研究のデータは、進行中の解析と計画中の追跡研究の完全性を保つため、責任著者への依頼により入手可能である。利益相反:著者らは利益相反がないことを宣言している。資金:本研究は外部からの資金提供を受けていない。
補足資料(表S1:CONSORTチェックリスト、表S2:事後検出力分析)、著者の貢献、略語一覧、参考文献[1]〜[50]は原文をご覧ください。
出典・ライセンス
Khouloud Ben Maaoui, Slaheddine Delleli, Arwa Jebabli, Nourhène Mahdi, Juan Del Coso, Hamdi Chtourou, Luca Paolo Ardigò, Ibrahim Ouergui, Jungjun Park. Acute Creatine Ingestion Before Resistance Training Enhances Strength Performance More than Ingestion During or After Training: A Randomized Crossover Pilot Trial. Nutrients 2026, 18(11), 1789. 公開日:2026年6月1日. DOI: 10.3390/nu18111789
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