3行まとめ
- Hyroxの男性選手8人が、筋トレ中心の日と有酸素中心の日の夜(各2晩)の睡眠を、腕につける医療機器でふだんの生活のまま測った。
- 筋トレの日は寝つきまでの時間が長く(中央値29分 対 10分)、有酸素の日は眠ってからの目覚めの時間が長かった(48分 対 31分)。総睡眠時間、睡眠効率、深い睡眠・レム睡眠の割合には差がなかった。
- 寝つきの悪さや中途覚醒は心拍の急な上昇(心臓覚醒)と関連していた。ただし8人の予備的な研究で、休養日との比較はなく、相関から因果はいえない。
日本語要約
目的
筋トレと持久系の両方を行う「ハイブリッド」アスリートで、その日のトレーニングが主に筋トレか持久系かによって、夜の睡眠の質・量・構造が変わるかを調べた。
方法
Hyroxのトレーニング歴1年以上の男性8人(23〜32歳、中央値28歳)。2週間の間に、筋トレ中心(1RMの60〜80%)と持久系中心(最大心拍数の60〜80%の自転車・ランニング)のトレーニング(1回60〜90分、午前9時〜午後7時、同じ曜日・同じ時刻)を各2回行い、その後の夜の睡眠を、心拍と体の動きを記録する腕のバンド型医療機器(Somno-Art)で測った。食事・トレーニング・生活は変えないよう指示し、就寝時刻は午前0時30分までとした。主観的な睡眠の質(0〜10点)も記録した。同じ様式の2晩を平均し、対応のあるt検定で比べた。
結果
全体では主観的な睡眠の質は概ね「良い」で、総睡眠時間は中央値394分(約6.6時間)、睡眠効率86%。筋トレ後は持久系の後より入眠潜時が長く(29分 対 10分、p = 0.003、d = 1.55)、中途覚醒時間(WASO)が短かった(31分 対 48分、p = 0.008、d = 1.30)。入眠前の心臓覚醒は筋トレ後に多く(13回 対 5回、p = 0.006)、入眠後の心臓覚醒は持久系の後に多かった(81回 対 99回、p = 0.010)。総睡眠時間、睡眠効率、N3・レム睡眠の割合、主観的な睡眠の質には有意差がなかった。入眠潜時は入眠前の心臓覚醒の回数と、WASOは入眠後の心臓覚醒の持続時間と正の相関があった。
限界
参加者8人の予備的研究で、男性のみ、「明らかな夜型」の人は除外。休養日の夜との比較はない。トレーニング内容は各自のふだんのメニューで、栄養や水分状態などは完全にはそろえていない。トレーニング終了から消灯までは中央値で約400分以上あった。N3睡眠の測定精度は中程度。相関分析なので、心臓覚醒が睡眠を悪くしたという因果関係は確認できない。
要約はKが論文を読んでまとめたものです。正確な内容は原文をご確認ください。
筋トレしている人への活かし方
この研究では、トレーニングを就寝の数時間以上前に終えていれば、筋トレの日も有酸素の日も、総睡眠時間や睡眠効率に差はありませんでした。日中〜夕方のトレーニングで睡眠が大きく崩れるとはいえない結果です。
筋トレの日は寝つきが少し遅くなる傾向がありました。筋トレの日に寝つきにくいと感じる人は、就寝前にリラックスする時間をとるなど、論文が勧める睡眠衛生の工夫を試す価値はあるかもしれません。
ただし対象は8人のHyrox選手で、早朝や就寝直前のトレーニングは調べていません。自分の生活にそのまま当てはまるとは限らないので、参考程度に受け取ってください。
眠れない状態が続く場合や睡眠に不安がある場合は、医師に相談してください。
これはKの個人的な読み方で、医療的な助言ではありません。
本文の日本語訳
以下は原論文の本文(抄録・参考文献を除く)の日本語訳です。図は原文へのリンクにしています。( )内の著者名と年は原文の引用文献です。
訳者注:原文の「Thiesse et al., 2022」は、参考文献リストでは2022aと2022bの2本があり、どちらを指すか原文では特定されていないため、そのまま「2022」としています。表1の「睡眠に割り当てた時間」は原文の sleep allocation time(消灯から点灯までの時間)です。
はじめに
生理的なプロセスとしての睡眠は、パフォーマンスと回復に決定的な影響を与えることから、アスリートにとって特に重要だと認識されている。アスリート、とりわけエリートアスリートには通常の睡眠機能の変化がみられることがあり、睡眠時間の短さや睡眠の質の低さが特徴とされることが多い(Walsh et al. 2021)。強度の高いトレーニングの後や試合の前に睡眠が悪くなることはよくあるため(Gupta et al. 2017)、睡眠の質は、高いトレーニング負荷、短距離・長距離の移動(Zubac et al. 2020)、夜の試合(18:00以降)や早朝のトレーニング(8:00より前)(Walsh et al. 2021)といったスポーツ特有の要因に加えて、社会的要因など、スポーツ特有ではない要因にも左右されるのではないかといわれている。一般に、1回の運動は睡眠構造にわずかな影響しか与えず、徐波睡眠の増加と、レム(REM:急速眼球運動)睡眠の始まりの遅れが報告されている(Korkutata et al. 2025)。さらに、トレーニングの時間帯の影響はまだ議論が続いており、夕方・夜の運動は睡眠への影響が最小限だとする研究もある一方で(Stutz et al. 2019)、入眠の4時間より前に終わる運動は、きつさにかかわらず睡眠の変化とは関連しないようである(Leota et al. 2025)。
特定の運動様式の影響については、継続的なレジスタンス運動(筋トレ)は睡眠のあらゆる面、特に睡眠の質を改善するといわれているのに対し、1回のレジスタンス運動の急性の影響はまだ十分に研究されておらず、結果も一貫していない(Kovacevic et al. 2018;Korkutata et al. 2025)。持久系トレーニングは、レジスタンストレーニングとは対照的に、睡眠中の過覚醒に関連する脳波活動を増やし、コルチゾール値を高めることがわかっており、夜に行う持久系運動には過覚醒の作用があるという仮説が立てられている(Perrier et al. 2024)。高強度運動(HIE)は、運動しない場合に比べてレム睡眠を減らすと報告されているため、特に入眠の約0.5〜4時間前に1回行う場合、一般に就寝前には勧められない。ただし、習慣的に夜にHIEを行うことは夜間の睡眠を妨げないようである(Frimpong et al. 2021)。これらの研究結果の不一致は、トレーニングのプロトコルや対象集団の違いによるものだとしばしば指摘されてきた(Stutz et al. 2019;Thomas et al. 2020;Yue et al. 2022;Korkutata et al. 2025)。特に、両方の様式でトレーニングしているとは限らないアスリートで、異なるトレーニング様式(レジスタンストレーニングと持久系トレーニング)が睡眠の指標に与える影響を直接比べることは、これまで行われていなかった。
Hyrox(ハイロックス)は、高強度機能的トレーニングの一種として人気が高まっている運動トレーニングで、高強度インターバルトレーニング、筋力トレーニング、ランニング、その他の持久系の様式など、さまざまなトレーニング要素を組み合わせたものである(Davids 2025)。実際、こうした「ハイブリッド」アスリートは、筋力重視のトレーニングと持久力重視のトレーニングを交互に行うのが一般的で、最大酸素摂取量、乳酸閾値、最大無酸素パワー、等尺性・等速性の筋力や筋パワーなど、さまざまな競技のトレーニング様式を代表する生理的要素をこなすことが特徴である(Adami et al. 2021)。
著者らの知る限り、ハイブリッドアスリートの睡眠の特徴を調べた研究や、異なるトレーニング様式の後の睡眠機能の違いに注目した研究はない。仮説として、主に持久系のトレーニングを行った後は、レジスタンストレーニングの日に比べて睡眠の指標が悪くなると考えた。第二に、トレーニング様式によって交感神経活動が異なり、それが1回のトレーニングごとに測った心臓覚醒(cardiac arousal)の時間と長さに表れると考えた。そこで本研究は、生態学的妥当性のある(=ふだんの生活に近い)方法で、Hyroxアスリートの睡眠の質と量を客観的に評価し、筋力系または持久系のトレーニング後の睡眠の特徴を比較することを目的とした。
方法
研究デザインと対象者
客観的な睡眠測定のために検証済みのウェアラブル医療機器を用いて、Hyroxアスリートの睡眠の特徴を調べる、生態学的妥当性のあるコホート・反復測定研究を計画した。本研究はトリエステ大学の倫理審査委員会(122/230522)の承認を受け、ヘルシンキ宣言の原則に従って実施した。参加者は書面によるインフォームド・コンセントに同意した。参加前に、アスリートには、合計2週間の評価期間の前および期間中に、食事、トレーニング、日々のルーティンを変えないよう指示した。
参加者は2025年8月中旬から10月にかけて、同じ「Hyrox」クラブでトレーニングする経験豊富なアスリートの中から募集した。参加条件は、18〜40歳であること、Hyroxの試合に向けて少なくとも1年トレーニングしていること、各運動様式に専念したトレーニングを週1回以上行っていること(すなわち筋力トレーニングを週1回以上、持久系トレーニングを週1回以上)とした。先行研究のプロトコル(Perrier et al. 2024)に合わせ、最近14日以内に現在のけがや最近のけがを報告した場合は除外した。これには過去1か月以内の大きなけがも含まれうる。参加できない条件は、睡眠や概日リズムに影響する薬やサプリメント(例:メラトニン)、心血管系の薬を飲んでいる場合、アルコール、オピオイド、ベンゾジアゼピンへの依存がある場合、週に28単位を超えるアルコールを飲む場合、1日5本を超えるたばこを吸う場合、1日150mgを超えるカフェインを摂る場合とした。さらに、交替勤務者や、平均就寝時刻が午後9時30分〜午前0時30分の範囲に入らない人も除外した。アスリートの本来の睡眠習慣をより正確に把握し、標本の均質性を高めるため、参加者には朝型夜型質問紙(Morningness-Eveningness Questionnaire)のイタリア語版に回答してもらった(Cavallera and Boari 2015)。「明らかな夜型」に分類された場合は、その分類がトレーニング様式とは無関係に睡眠の質の測定に影響しうるため(Lim et al. 2021)、除外した。
トレーニングは、各アスリートのふだんのトレーニング予定に合わせて、同じ曜日・同じ時刻に行い、その時刻は午前9時から午後7時までの間のいずれかだった。週の中の用事による偏りを減らすため、トレーニング様式の順番はカウンターバランス(入れ替え)した。「筋力」重視と「持久力」重視のトレーニングは、合計の運動時間を同じにした。アスリートが自己申告したトレーニング時間は1回60〜90分だった(同じ参加者の中では同じ時間で繰り返した)。持久系トレーニングは、典型的には最大心拍数の60〜80%の強度での自転車またはランニング、レジスタンストレーニングは、典型的には各アスリートの個人的なピリオダイゼーションに沿って、1RMの60〜80%で基本的な筋力トレーニング種目(スクワット、デッドリフトなど)を行うものだった。本研究は生態学的妥当性のある方法をとったため、午前0時30分の基準時刻までに床に就く限り、厳密な「就寝時刻」は指定しなかった。各自のトレーニング内容、トレーニング時間、主観的運動強度、申告された就寝時刻は補足表1に示した(原文参照)。
睡眠の評価と評価項目
上記のデザインに従い、2週間の間に行ったレジスタンストレーニング2回と持久系トレーニング2回(その間に36〜48時間の休息をはさむ)の後の夜について、睡眠の質と特徴を評価した。主観的な睡眠の質の評価には、区切りのある視覚的アナログ尺度に基づく1項目の睡眠の質尺度(SQS)を用い、参加者には(起床後2時間以内に)前夜の睡眠の質を評価してもらった。得点は0〜10で、0=最悪、1〜3=悪い、4〜6=まあまあ、7〜9=良い、10=非常に良い、に分類した(Snyder et al. 2018)。睡眠の指標を客観的に評価するため、参加者はSomno-Artシステム(PPRS社、フランス)を使用した。これは、心拍数を含む生理データを体の動きとあわせて連続的に記録する、腕に巻く電子アームバンド型の外来用医療機器である。心拍数とそこから算出される心拍変動は睡眠段階によって変わるとされ、アクチメトリー(手首の動き)は総睡眠時間を評価する代わりの指標として使われてきた(Muzet et al. 2016)。収集したデータは専用ソフトウェア(Somno-Art Software v.2.8.0[3.2.1])で解析した。このソフトウェアは、健康な人と睡眠障害のある人の両方で、標準的な臨床ポリソムノグラフィーと比較して検証されている(Thiesse et al. 2019、2022a、2022b、2023)。先行研究で臨床の標準機器と比べたとき、すべての睡眠指標で良好(0.75 < ICC < 0.90)または優秀(ICC > 0.90)なICCを示すことから、Somno-Artシステムは本研究で使える最良の機器と考えた。なお、N3睡眠は中程度の許容性(0.50 < ICC < 0.75)にとどまることを、結果の解釈の際に留意すべきである(Thiesse et al. 2022)。製造元の指示に従い、参加者には就寝前にアームバンドを正しく装着し、就寝前(消灯時)に機器をきちんと較正する方法を指導した。記録は朝起きたとき(点灯時)に止めた。抽出した睡眠指標は次のとおり:(i)睡眠に割り当てた時間(分):「消灯」から「点灯」までの時間、(ii)総睡眠時間(TST、分):覚醒(W)以外の段階の合計時間、(iii)入眠潜時(分):「消灯」からいずれかの睡眠段階に入るまでの時間、(iv)中途覚醒時間(WASO、分):入眠後の覚醒段階の時間、(v)睡眠効率(%):睡眠に割り当てた時間に対するTSTの割合、(vi)レム潜時(分):入眠から最初のレム睡眠までの時間、(vii)N1+N2(分および%):ノンレム睡眠段階1(N1)とノンレム睡眠段階2(N2)の合計時間、(viii)N3(分および%):ノンレム睡眠段階3の合計時間、(ix)R(分および%):レム睡眠の合計時間。さらに、心臓覚醒(CA:心拍数が急に上がり、その後もとの値に戻ること)の回数と持続時間も、詳しく述べられた手順(Muzet et al. 2016)に従って評価した。心臓覚醒は入眠(SO)の前と後に分けて記録した。同じトレーニング様式の2晩の間の級内相関分析で適切な一致が確認されたため(ICCは0.503〜0.840)、2晩のデータを(様式ごとに)平均し、様式間の統計的比較に用いた。
統計解析
適切な標本数と達成される検出力を決めるため、G*Powerソフトウェアを用いた。想定値は同様の先行研究(Perrier et al. 2024)のデータに基づき、効果量(ES)0.56、α 0.05、検出力0.8とした。この前提から、本研究に十分な検出力を持たせるのに必要な最小標本数は7人だった。したがって、8人が反復測定ですべての試行を完了した本研究は、十分な検出力を持つ。これらの統計的前提を確かめるため、有意な結果のうち効果量が最も小さいもの(1.17)について事後分析を行ったところ、達成された検出力は0.81だった。統計解析にはSPSS v.23(IBM社、米国)を用いた。分布の正規性はシャピロ・ウィルク検定で確認した。標本の特徴と結果の要約には記述統計を用い、連続変数は中央値と四分位範囲(第1四分位〜第3四分位)、カテゴリー変数は度数(割合)で示した。試行間(レジスタンストレーニングと持久系トレーニング)の睡眠指標の平均の差は対応のあるt検定で比べ、効果量(ES)としてコーエンのdを示した(d = 0.2 小、0.5 中、0.8 大と解釈;Cohen 1988)。注目する睡眠指標と心臓覚醒の間について、入眠前・入眠後のそれぞれで、ピアソンの相関係数(r)による二変量相関分析を行った。統計的有意水準はp < 0.05とした。
結果
男性のハイブリッドアスリート8人(23〜32歳、中央値28歳)が自発的に参加し、脱落者なくすべての試行を完了した。参加者の体重は75.8kg(範囲:60〜80)、身長1.80m(範囲:1.69〜1.85)、BMIは23.3kg/m²(範囲:20.2〜24.6)だった。Hyroxの試合に特化したトレーニング歴は1〜6年だった。朝型夜型質問紙では、5人が「やや夜型」(得点31〜41)、2人が「中間型」(得点42〜58)、1人が「やや朝型」(得点59〜69)に分類された。
睡眠の結果
トレーニング終了から「消灯」までの時間の中央値は、レジスタンストレーニング後が約400分(最小〜最大:210〜555)、持久系トレーニング後が425分(最小〜最大:295〜480)だった。全試行の平均では、Hyroxアスリートは比較的「良い」主観的睡眠の質を報告した(80%の夜が「良い」、20%の夜が「まあまあ」)。(Somno-Artで測った)睡眠に割り当てた時間の中央値は454分(範囲:439〜477)、TSTは394分(範囲:381〜407)、入眠潜時は15分(範囲:10〜31)、WASOは39分(範囲:30〜49)、睡眠効率は86%(範囲:85〜87)、レム潜時は75分(範囲:68〜86)だった。睡眠構造では、覚醒(W)が62分(範囲:58〜69)、浅いN1+N2睡眠が62%(範囲:59〜63)、深いN3睡眠が18%(範囲:17〜21)、レム(R)睡眠が20%(範囲:19〜21)だった。注目すべきこととして、入眠前の心臓覚醒(CA)の回数は7回(範囲:5〜13)で持続時間は約2分(範囲:2〜4)だったのに対し、入眠後のCAの回数は94回(範囲:79〜103)と大幅に多く、持続時間も約31分(範囲:29〜37)と長かった。
すべての睡眠指標の様式間の比較(レジスタンストレーニングと持久系トレーニング)を表1に示す。相関分析では、入眠潜時と入眠前のCAの回数の間に、レジスタンストレーニング後(r = 0.727、p = 0.041)(図1A)と持久系トレーニング後(r = 0.995、p < 0.001)(図1B)の両方で有意な関連があった。また、WASOと入眠後のCAの持続時間の間にも、レジスタンストレーニング後(r = 0.775、p = 0.024)(図1C)と持久系トレーニング後(r = 0.802、p = 0.017)(図1D)で有意な関連があった。
| 指標 | レジスタンス | 持久系 | p値(効果量) |
|---|---|---|---|
| SQS | 8 (7–8) | 8 (7–8) | 0.451 (0.28) |
| 睡眠に割り当てた時間(分) | 449 (439–466) | 458 (437–486) | 0.404 (0.32) |
| TST(分) | 388 (374–399) | 399 (388–415) | 0.508 (0.25) |
| 入眠潜時(分) | 29 (24–36) | 10 (9–12) | 0.003 (1.55) |
| WASO(分) | 31 (24–33) | 48 (37–58) | 0.008 (1.30) |
| 睡眠効率(%) | 87 (86–88) | 86 (85–87) | 0.669 (0.16) |
| レム潜時(分) | 76 (73–79) | 71 (66–94) | 0.452 (0.28) |
| 覚醒(W)時間(分) | 61 (58–67) | 64 (58–71) | 0.774 (0.10) |
| N1+N2(%) | 61 (59–62) | 63 (61–63) | 0.310 (0.39) |
| N3(%) | 19 (18–21) | 18 (18–20) | 0.690 (0.15) |
| R(%) | 21 (20–21) | 19 (18–20) | 0.120 (0.64) |
| 入眠前のCA回数 | 13 (9–16) | 5 (3–5) | 0.006 (1.38) |
| 入眠前のCA持続時間(分) | 4 (4–5) | 2 (2–2) | 0.005 (1.43) |
| 入眠後のCA回数 | 81 (67–93) | 99 (95–106) | 0.010 (1.26) |
| 入眠後のCA持続時間(分) | 30 (29–30) | 36 (33–42) | 0.013 (1.17) |
SQS:1項目の睡眠の質尺度、TST:総睡眠時間、WASO:中途覚醒時間、R:レム睡眠、N1・N2・N3:ノンレム睡眠段階1・2・3、CA:心臓覚醒、SO:入眠。太字は対応のあるt検定でp < 0.05。効果量はコーエンのd。
図1 二変量相関分析。A:レジスタンストレーニング後の入眠潜時と入眠前の心臓覚醒(回数)、B:持久系トレーニング後の入眠潜時と入眠前の心臓覚醒(回数)、C:レジスタンストレーニング後のWASOと入眠後の心臓覚醒(持続時間、分)、D:持久系トレーニング後のWASOと入眠後の心臓覚醒(持続時間、分)。図は原文をご覧ください。
考察
睡眠は、適切な強度・集中力・活力で高いトレーニング負荷をこなす能力を含め、競技パフォーマンスに影響する重要な行動上の健康要因である。それにもかかわらず、競技アスリートで異なるトレーニング様式が睡眠に与える影響についてはほとんどわかっていない。著者らの知る限り、本研究は、ハイブリッドアスリートの客観的に測った睡眠の特徴を、2つのトレーニング様式(レジスタンストレーニングと持久系トレーニング)の比較も含めて調べた初めての研究である。Hyroxの参加者は全員、主観的・客観的な指標の両方で、全体として概ね「良い」睡眠を示した。睡眠の結果にはトレーニング様式によるわずかな差があり、寝つきに影響していた。心臓の特徴も運動様式によって異なっていた。
本研究のハイブリッドアスリートは、研究期間を通して特定の、繰り返し可能なトレーニングを行っていた(トレーニングの詳細は補足表1参照)。簡単に述べると、本研究は生態学的妥当性のあるデザイン(特定のトレーニング負荷を課さない)をとったが、各アスリートに面談してトレーニングのルーティンと、参加者の間に大きな違いがないかを確認した。全アスリートが、週を通じて、%最大心拍数(持久系)と%1RM(レジスタンス)の点で同程度の強度と時間のトレーニングを報告した。重要な点として、持久系と筋力系のトレーニング負荷は、2回の記録日で同じだった。
12競技の若年成人エリートアスリート175人を対象とした最近の研究(Sargent et al. 2021)では、アクチグラフィーによる習慣的な睡眠時間は6.7 ± 0.8時間で、個人競技のアスリートはチーム競技のアスリートより短かった。睡眠の満足度の自己評価は6.8 ± 1.6/10.0だった。さまざまな競技から集めた313人のアスリート(18〜60歳)を対象とした別の横断研究(Randell et al. 2021)では、自己申告の睡眠時間は7.6 ± 1.0時間で、ランナーはチーム競技のアスリートより睡眠時間が短かった。この標本では、入眠潜時は約22分と報告された。アスリート1830人を対象としたシステマティックレビューでは、平均睡眠時間は7.7 ± 1.1時間、睡眠効率は86.3 ± 6.8%と報告され(Vlahoyiannis et al. 2021)、最近ではエリートの若年ボート選手13人の睡眠指標を携帯型ポリソムノグラフィーで評価した研究があり(Hof zum Berge et al. 2021a)、総睡眠時間は約6.7時間、入眠潜時は約18分、WASOは約42分、睡眠効率は約82%だった。
本研究のアスリートの総睡眠時間は約6.6時間で、先行研究、特にボート選手の研究(Hof zum Berge et al. 2021a)と一致していた。そのほかの睡眠指標である入眠潜時(約15分)、WASO(約39分)、睡眠効率(約86%)も、これまでの報告と同程度だったが、トレーニングの種類による差がみられた。レジスタンストレーニングでは、持久系トレーニングに比べて入眠潜時が長く、WASOが短かった。これまでに、筋力系と持久系の1回の運動が睡眠指標に与える影響を直接比べた唯一の研究では、2種類のトレーニングの間に有意差は報告されていない。ただしその参加者は、ハイブリッド競技を積極的にトレーニングしていない、トレーニングを積んだ健康な男性だった。また、そのトレーニングは10:00に始まっており(Roveda et al. 2011)、その後の睡眠への影響が最小限だった可能性がある。レジスタンストレーニングが入眠潜時に影響する可能性は、競技の種類によって、パワー・瞬発系の競技では他の競技より入眠潜時が長いという先行データ(Vlahoyiannis et al. 2021)によって支持されるかもしれない。さらに、WASOと入眠潜時の悪化は1日のトレーニング負荷と相関することがわかっているが(de Blasiis et al. 2021)、運動による遅発性筋肉痛の役割についてはまだ議論がある(Hausswirth et al. 2014;de Blasiis et al. 2021)。
睡眠構造については、本研究では深い睡眠段階(N3)が睡眠時間の18%(範囲:17〜21)、レム睡眠の割合が20%(範囲:19〜21)だった。これらの値は、5競技のエリートアスリート20人を対象とした先行研究(Hof zum Berge et al. 2021b)と一致している。その研究では、睡眠構造の割合はN1が5.73 ± 3.41%、N2が36.78 ± 7.67%、N3が26.4 ± 6.13%、レム睡眠が8.02 ± 5.18%だった。一般にノンレム睡眠が多くレム睡眠が少ないアスリートでない成人と比べると、ハイブリッドアスリートはレム睡眠が約5%少なく、N1+N2が約7%長かった。トレーニング様式による有意差はなかったが、文献では競技の種類が睡眠構造に影響しうるとされ、無酸素系の競技ではレム睡眠がやや少なく、N3睡眠は有酸素系やパワー系の競技よりも混合系の競技のアスリートで長いと報告されている(Vlahoyiannis et al. 2021)。最後に、スポーツ分野の先駆的な研究では、持久系レースの後にレム睡眠の割合が減り、N3睡眠の時間が増えうることが示され、レム睡眠が運動によるストレスの敏感な指標であることが示唆されている(Shapiro et al. 1981;Driver et al. 1994)。一方、N3睡眠は、アスリートの生理的な回復の必要が高まると増える(Sekiguchi et al. 2019)。
心臓の自律神経活動は、運動トレーニングの種類によって影響を受ける可能性がある。本研究では、レジスタンストレーニングを行った後は入眠前の心臓覚醒が多く長かったのに対し、持久系トレーニングを行った後は入眠後の心臓覚醒が多く長かった。これらの結果は、トレーニング様式が入眠潜時(レジスタンストレーニング後に長い)とWASO(持久系トレーニング後に長い)に異なる影響を与えることについて、自律神経の面からの根拠を示しているように思われる。ただし、この関係の因果性は相関分析だけでは確認できない。心臓の自律神経反応は入眠や睡眠維持と関係している可能性があるが(Nano et al. 2020)、運動後の睡眠中の役割はほとんど調べられていない。運動の時間が遅く、運動のきつさが高いと、夜間の安静時心拍数が高く、夜間の心拍変動が低い(つまり交感神経の働きが強い)ことと関連する可能性があることがわかっている(Leota et al. 2025)。こうした反応は、夜遅くの激しい運動の後、眠り始めの数時間に強まったり、目立ったりする可能性がある(Myllymäki et al. 2011)。このように、本研究は、心臓の自律神経活動と睡眠の質の関連を示唆したこれまでの研究を裏づけるものであり、運動様式によるこの調節は、アスリートにとって関心のあるものかもしれない。まとめると、本研究の結果は、ハイブリッドアスリートの睡眠の特徴は他の「伝統的な」競技で見られるものと一致する一方で、トレーニングの種類(レジスタンストレーニングか持久系トレーニングか)が睡眠の質に影響するようであり、入眠前と入眠後の両方で心臓の自律神経活動への影響の可能性が観察されたことを示唆している。
本研究は、トレーニングの特徴が似たアスリートを対象とし、ふだんのトレーニングルーティンや通常の睡眠機能に影響しうる特定のメニューを課さない、生態学的妥当性のあるデザインをとった。そのため、曜日による偏りや睡眠機能への順序効果を最小限にするため、トレーニングの順番をランダムにしたクロスオーバー・デザインを用いた。しかし、参加者のトレーニング予定が詰まっていたため、アスリートのトレーニング予定やピリオダイゼーション計画に直接影響を与えずに、トレーニング日の後の睡眠と完全休養日の後の睡眠を比べることはできなかった。本研究は運動様式による違いを調べようとしたため、ある程度同等の「作業量」のトレーニングを求め、それらは概ね同等だったが、運動様式どうしを直接比べる際に、現実のトレーニングの複雑さ(例:栄養の摂り方、水分状態、エネルギー収支)をすべて考慮することはできなかった。公平な比較ができるよう、研究者が管理できる外部要因を最小限にするあらゆる努力をした。たとえば、全体のトレーニング時間をそろえるようアスリートに求めたこと、同じ様式について2日間同一のトレーニング・栄養記録にしたこと、すべての運動を就寝の数時間前までに終えるようにしたことである。さらに、クロノタイプの違いが睡眠の質に与える影響を減らすため、「明らかな夜型」は本研究に含めなかった。これにより、そのクロノタイプのアスリートへの結果の一般化が制限される可能性がある。本研究では男性の参加者だけが自発的に参加し、最終的なデータ解析に含まれたため、女性アスリートへの一般化には限界がある。女性アスリートの睡眠とパフォーマンスに対する月経周期や女性特有の生理の影響を明らかにするには、さらに多くの研究が必要だと著者らは認識している(Hrozanova et al. 2021;Kullik et al. 2025)。客観的な睡眠測定に検証済みのウェアラブル医療機器を用いたことで、負担の少ない方法で睡眠の質・量・構造について多くのデータを集めることができた。最後に、ハイブリッドアスリートに注目したことで、研究の少ないトレーニング集団について新しいデータが得られただけでなく、両方のトレーニング様式に慣れたアスリートで、トレーニングの種類が睡眠に与える影響についての知見も得られた。本研究の結果は、i)ハイブリッドアスリートの典型的なトレーニングルーティンは、少なくともトレーニングを就寝の3〜4時間以上前に終えている場合、それ自体では睡眠の質や量を損なわないこと、しかし ii)心臓覚醒(交感神経の活性化のサイン)は入眠潜時や「中途覚醒」の指標に影響する可能性があるため、激しくトレーニングする場合には、リラクゼーションの実践や良い睡眠衛生の工夫を勧めることが、アスリートの睡眠の質を促し、改善するうえで重要であることを示唆している。
結論
Hyroxアスリートは、高いトレーニング負荷と、主にレジスタンストレーニングと持久系トレーニングという異なるトレーニング様式を特徴とし、それらはアスリートの睡眠の質と量に異なる影響を与えた。この予備的研究から、ハイブリッドアスリートは他の競技集団と一致する睡眠の特徴を示し、全体としてアスリートでない人と比べて睡眠指標がわずかに悪いだけだった。もう一方の運動様式と比べて、レジスタンストレーニングは入眠潜時を長くし、持久系トレーニングは中途覚醒時間を長くした。これはそれぞれ、入眠前と入眠後の心臓の自律神経活動の増加に反映されていた。
謝辞・その他(原文より)
謝辞:研究に自発的に参加してくれたすべての参加者に感謝する。
倫理承認:すべての参加者にインフォームド・コンセントへの署名を求めた。すべての手順はトリエステ大学の倫理審査委員会により承認された(プロトコル番号 122/230522)。
データの利用可能性:匿名化したデータは、責任著者への合理的な依頼により入手可能である。利益相反:なし。資金:オープンアクセス費用はCRUI-CARE協定のもとでトリエステ大学が負担した。
補足資料(補足表1:各自のトレーニング内容など)、著者の貢献、略語一覧、参考文献は原文をご覧ください。
出典・ライセンス
Alex Buoite Stella, Fabio D’Andrea, Manuela Deodato, Luigi Murena, Raffaele Sabot, Miriam Martini, Shawnda A. Morrison, Miloš Ajčević. Strengthening recovery, enduring sleep. An ecologically valid assessment of sleep quantity and quality in hybrid athletes: does training mode matter?. Eur J Appl Physiol 2026, 126(6), 3473–3480. 公開日:2026年2月28日. DOI: 10.1007/s00421-026-06187-9
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