睡眠の話

どれくらい眠ればいい?睡眠負債ってなに?睡眠研究者・柳沢正史さんの解説と、厚生労働省の睡眠ガイドをもとにまとめました。

このページについて

睡眠研究者の柳沢正史さん(筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構〔WPI-IIIS〕機構長・教授)が、インタビューなどで一般向けに話している内容と、厚生労働省の資料をもとに、睡眠の基本をKがまとめたページです。文章は要約・言い換えで、直接の引用ではありません。各項目の番号は、ページ下の出典に対応しています。

※柳沢正史教授・筑波大学とは関係がなく、内容の監修や推薦を受けたものではありません。

柳沢正史さんの研究

柳沢さんは1998年、脳の視床下部ではたらく物質「オレキシン」を発見したグループの中心人物です[1][8]。翌1999年には、オレキシンを作れないマウスが、強い眠気や脱力発作が起こる病気「ナルコレプシー」とよく似た状態になることを報告し、オレキシンが眠りと目覚めの切り替えに関わることを示しました[9]。

2016年には、多数のマウスの眠りを調べる方法で、眠る時間が大きく増える「Sleepy(スリーピー)」マウスを見つけ、Sik3という遺伝子の変化が「眠りの必要量」を増やすことを報告しています[10]。

なぜ睡眠が大事なのか

人がなぜ眠るのかは、実はまだよくわかっていません。一方で、眠らないと何が起こるかはよく調べられています[1]。

短期的には:脳と体のパフォーマンスが落ちる

柳沢さんによると、一晩徹夜したときの脳のパフォーマンスは、血中アルコール濃度0.1%、つまりかなり酔った状態と同じくらいまで落ちるとされています。また、個人差はあるものの、1日4時間睡眠を5〜6日続けると、徹夜と同じくらいまで落ちる場合があるそうです[1]。仕事のミスが増え、イライラしやすくなるなど、感情のコントロールにも影響します[1]。

長期的には:病気のリスクが上がる

睡眠不足が続いた状態は「睡眠負債」と呼ばれます。睡眠負債がたまると、肥満・高血圧・糖尿病などの生活習慣病のリスクが上がることが、最も確かな根拠とされています。ほかにも、感染症にかかりやすくなること、うつ病などのメンタルの不調、中高年以降の認知症のリスクとの関係が報告されています[1]。

どれくらい眠ればいい?

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は6時間以上を目安に睡眠時間を確保することがすすめられています[2]。ただし必要な睡眠時間には個人差があり、年齢によっても変わります[1]。

自分に必要な睡眠時間の調べ方

柳沢さんがすすめている方法は、連休などに、誰にも邪魔されない環境で3〜4晩続けて「眠れるだけ眠る」ことです。最初の晩は睡眠負債の分だけ長く眠りますが、だんだん短くなり、3晩目・4晩目に落ち着いた時間が、その人に必要な睡眠時間の目安になる、と説明しています[1]。

「質がよければ短くても大丈夫」は本当?

柳沢さんは、睡眠はまず「量」が大事で、質で量を補うことはできないと話しています。本当に短い睡眠で平気な「ショートスリーパー」は、ごく一部の人に限られるそうです[3]。

「1.5時間の倍数」はいい?

「90分の倍数で起きるとすっきりする」という説について、柳沢さんは根拠のない、いわば都市伝説だとしています。どれくらい眠ればすっきり起きられるかは、個人差もあり、まだわかっていないそうです[4]。

睡眠負債を返すには

柳沢さんは、睡眠は「時間が余ったら取るもの」ではなく、住宅ローンのように毎晩きちんと返すべきものだと例えています[3][4]。

働く世代の多くは、自分が睡眠不足だと気づいていないことが多いそうです。そこで柳沢さんがすすめているのが、1週間ほど、毎晩30分〜1時間早く寝てみることです。多くの人が、昼間の眠気や仕事の効率の違いに気づくと話しています[1][3]。

よい眠りのための習慣

柳沢さんは、睡眠は「減点法」で、眠りを悪くする行動を一つずつ減らしていくことが大事だと話しています[4]。インタビューで挙げられているポイントは次のとおりです。

こんなときは病院へ

生活習慣を見直しても、眠った気がしない、日中の眠気が強いといった状態が続く場合は、睡眠障害が隠れていることがあります[2]。

このページは一般的な情報で、医療的な助言ではありません。体調の不安がある場合は、医師に相談してください。

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出典

  1. 広報誌「厚生労働」2025年3月号 睡眠企画(柳沢正史氏インタビュー)|厚生労働省
  2. 健康づくりのための睡眠ガイド2023|厚生労働省(PDF)
  3. 世界的睡眠研究者が勧める「睡眠の質を上げる」方法|AERA Books(朝日新聞出版)
  4. 世界的権威・柳沢正史氏に聞く『良い眠り』のコツ|MBSニュース(2025年3月)
  5. 睡眠研究の第一人者が語る眠れる方法とは|日本経済新聞(2025年)
  6. 不眠症|e-ヘルスネット(厚生労働省)
  7. 睡眠障害|厚生労働省 eJIM
  8. Sakurai T, …, Yanagisawa M. Orexins and orexin receptors. Cell. 1998;92(4):573-585.
  9. Chemelli RM, …, Yanagisawa M. Narcolepsy in orexin knockout mice. Cell. 1999;98(4):437-451.
  10. Funato H, …, Yanagisawa M. Forward-genetics analysis of sleep in randomly mutagenized mice. Nature. 2016;539:378-383.

確認日:2026年10月11日。記事・資料の内容はKが要約・言い換えたものです。正確な内容は各出典をご確認ください。本ページは柳沢正史教授・筑波大学・各出典元とは関係がなく、監修・推薦を受けたものではありません。