3行まとめ
- 筋トレ経験のある若い成人10人が、カロリーを30%減らした食事を5日間続けたあと、全身運動の直後に、タンパク質34.7gを「EAA入りホエイ(EAA 24g)」「ホエイだけ(EAA 18.7g)」「ふつうの食事(EAA 11.4g)」のいずれかで摂った(3条件すべてを順番に行うクロスオーバー試験)。
- 運動後3時間の全身のタンパク質の正味バランスは、EAA入りホエイがホエイだけより22.1g、食事より18.0g大きくプラスになった(どちらもP = 0.001)。
- 一方、太ももの筋肉で測った筋タンパク合成(mixed-MPS)は3条件で差がなかった(P = 0.68)。EAAを足すと全身のバランスはよくなったが、筋肉そのものの合成が増えたとまでは言えない結果である。
日本語要約
目的
減量などで摂取カロリーが足りない状態のとき、運動後に摂るタンパク質の形態(遊離EAAを足したホエイ、ホエイだけ、ふつうの食事)によって、全身のタンパク質バランスと筋タンパク合成が変わるかを、タンパク質量をそろえて調べた。
方法
健康でレジスタンストレーニング経験(過去6か月、週2回以上)のある18〜25歳の10人(男性8人・女性2人と表記、平均21歳、体重77.6kg、BMI 25.7)。ランダム化・二重盲検(飲料2種)のクロスオーバー試験で、体重維持の食事3日間のあと、必要エネルギーの30%を減らした食事(タンパク質は1.6g/kg/日を維持、約1,624kcal/日)を5日間、14日間の間隔を空けて3回行った。各回の翌朝、安定同位体(フェニルアラニン・チロシン)の点滴を行いながら、重りを背負ったトレッドミル歩行とトラップバー・デッドリフト(推定1RMの70%)+ボックス・ステップアップの全身運動を行い、直後にEAA+ホエイ(タンパク質34.7g・EAA 24.0g・172.6kcal)、ホエイプロテインアイソレート(34.7g・EAA 18.7g・150.3kcal)、戦闘糧食のチリビーンズ(34.7g・EAA 11.4g・566.9kcal)のいずれかを摂った。運動後180分の全身タンパク合成(PS)・分解(PB)・正味バランス(NET)と、外側広筋の筋生検による混合筋タンパク合成(mixed-MPS)を測った。
結果
5日間で体重はどの条件でも約1.1〜1.3kg減り、条件間の差はなかった。運動前後から食後への変化で、全身PSはEAA+ホエイがホエイより15.8g/180分、食事より19.4g/180分大きかった(どちらもP = 0.001)。全身PBの減少はEAA+ホエイがホエイより6.3g/180分(P = 0.02)、食事がホエイより7.7g/180分(P = 0.002)大きかった。その結果、NETの変化はEAA+ホエイがホエイより22.1g/180分、食事より18.0g/180分大きく、食事もホエイより4.2g/180分大きかった(いずれもP = 0.001)。血中EAAの上がり方はEAA+ホエイ>ホエイ>食事の順。一方、mixed-MPSは3条件で差がなかった(P = 0.68)。カロリーあたりで見たmixed-MPSは、EAA+ホエイとホエイが食事より大きかった。
限界
参加者は10人と少なく、条件ごとに1回、運動後約3時間だけの急性の測定で、筋肉量や筋力が長期的に変わるかは調べていない。全身のタンパク質バランスは計算モデルにもとづく推定で、食事(MEAL)は3時間で消化・吸収が終わりきらないため、分解(PB)が過小評価されていると著者自身が述べている。対象は軍の研究で、運動は負荷運搬を含む全身運動、ふつうの運動は期間中禁止、サプリやカフェインも禁止という特殊な条件。EAA+ホエイの製品を提供した会社の株主・特許の発明者が著者に含まれる(データ収集・解析には関与せず盲検化と記載)。
要約は運営者が論文を読んでまとめたものです。正確な内容は原文をご確認ください。
筋トレしている人への活かし方
カロリーを減らしている時期に、タンパク質の量をそろえて比べると、EAAを足したホエイは「体全体のタンパク質の収支」を最もプラスにしました。ただし、太ももの筋肉で測った筋タンパク合成は、EAA入りホエイ・ホエイ・ふつうの食事で差がありませんでした。「EAAを足せば筋肉が増える」と言える結果ではありません。
減量中のタンパク質は、まず1日の総量を確保することが先です。この研究でも、食事全体のタンパク質は全条件で体重1kgあたり1.6g/日に保たれていました。食事でタンパク質が足りない日にプロテインで補い、EAAは「カロリーを抑えながらアミノ酸を手軽に足したい」「プロテインがお腹に合わない」ときの選択肢、くらいに考えるのが現実的です。
ふつうの食事(約567kcal)でも、運動後の全身のバランスはホエイだけより少しよく、カロリーあたりで見なければ筋タンパク合成も同じでした。サプリがないと減量中に筋肉を守れない、というわけではありません。
腎臓の病気がある人や、医師からタンパク質を制限されている人は、プロテインやEAAを増やす前に医師に相談してください。
これは運営者の個人的な読み方で、医療的な助言ではありません。
本文の日本語訳
以下は原論文の本文(抄録・参考文献・略語一覧を除く)の日本語訳です。図は原文へのリンクにしています。[ ]内の数字は原文の参考文献番号です。計算式は省略し、要点を訳注で示しています。
訳者注:原文の中には、いくつか食い違いがあります。(1) 参加者の項では「12人の男性ボランティアが登録した」とありますが、表1では完了者10人の性別が「男8/女2」となっています。(2) 方法の「mixed-MPSのエネルギー量あたりの計算」では、EAA + Wを150.3 kcal、WHEYを172.6 kcalと書いていますが、表2ではEAA + Wが172.6 kcal、WHEYが150.3 kcal(考察でもEAA + Wは173 kcal)です。本訳では原文の記述をそのまま訳しています。また「EAA + W」はホエイと遊離EAAを独自に配合した製品で、市販のEAAとホエイを自分で混ぜた場合と同じとは限りません。
減量中の食事全体の組み立て方は減量中の食事、筋肉を残すトレーニングは減量中の筋トレ、1日に必要なたんぱく質量はたんぱく質 必要量計算で確認できます。
はじめに
軍人、階級制競技のアスリート、山林火災の消防士のような過酷な職業の人は、避けられないエネルギー不足(摂取カロリーが消費カロリーを下回る状態)の期間をたびたび経験する。この状態では、全身のタンパク質バランスがマイナスのまま続くことや、筋タンパク合成(MPS)が鈍ることなどにより、骨格筋が分解され、全身のタンパク質が失われやすくなる[1–5]。必須アミノ酸(EAA)を豊富に含む良質なタンパク質を摂ると、エネルギーが足りている状態では強い同化(体をつくる方向の)刺激になるため、エネルギー不足のときに摂れば、筋肉や全身のタンパク質の損失を打ち消せる可能性がある[6–8]。しかし、エネルギー不足の間に全身のタンパク質バランスとMPSの両方を最適にするには、EAA・タンパク質をどれだけの量、どんな食品形態で摂ればよいのかは、よくわかっていない。量については、著者らは最近、エネルギー不足の間に遊離(フリーフォーム)のEAAを多め(0.30 g/kg)に摂ると、現在の運動後のタンパク質摂取の推奨に沿った標準量(0.10 g/kg)よりも、運動後の全身タンパク質バランスが大きく改善することを示した[9]。
摂るEAA・タンパク質の食品形態は、含まれるアミノ酸の組成や、消化・吸収の速さを通じて、その質と同化刺激の強さを左右する。これらの要因は、末梢の血液に入ってくるEAAの量とパターン、つまり全身のタンパク質代謝回転とMPSを支える材料の量に影響する[10–13]。一般の人々も、過酷な作戦中に主に戦闘糧食で食いつなぐ軍人も、EAA・タンパク質の大部分は、自然の食品のタンパク質を含む「三大栄養素の混ざった食事」から摂っている。しかし、こうした食事で最適な量のEAA・タンパク質を摂るには、より効率のよい形態がある場合よりも、食べる量そのものを増やさなければならない。食べる量を増やすことは、実際の軍事訓練や作戦[14, 15]、ウルトラ耐久レース、山林火災の消火活動の中では、しばしば実行が難しい。同じくらい重要なのは、こうした場面では、混合食による同化刺激が十分でない可能性があることである。混合食は、タンパク質単体や遊離EAAに比べて、アミノ酸組成(EAA含有量)も消化・吸収の速さも低く、その後の末梢EAA濃度の上昇も小さいからである。ホエイプロテインは、タンパク質の同化を支えることが広く示されている、混合食の代わりになる選択肢の一つである[16]。ホエイは約40〜50%がEAAで、すばやく消化・吸収され、末梢EAA濃度を大きく上げる。遊離の形で摂るEAAも、混合食の代わりになるもう一つの選択肢である。消化を必要とせず、すばやく吸収され、他の形態よりも末梢EAA濃度を速く上げる。
タンパク質そのもの(インタクトプロテイン)と遊離EAAを組み合わせると、両方の形態のアミノ酸組成と消化・吸収の特性を生かして、末梢EAA濃度を大きく、かつ長く上げられるため、同化に有利な配合になる可能性がある。Churchward-Venneら[13]は、エネルギーが足りている状態で、少量のホエイにEAAを加えたものを摂った場合と、標準量のホエイだけを摂った場合とで、運動後3時間の筋原線維タンパク合成速度が同程度だったと報告している。著者らの知る限り、エネルギー不足の間に、異なるEAA・タンパク質の形態がタンパク質代謝に与える影響を調べた研究はない。そこで本研究では、エネルギー不足の間の運動後に、窒素量(=タンパク質量)をそろえた3つの形態、すなわち「遊離EAAとホエイプロテインを組み合わせたもの」「ホエイプロテインだけ」「混合食」を摂ったときの影響を調べた。仮説は、EAAを強化したホエイを摂ると末梢EAAがより大きく上がり、エネルギー不足の間の全身タンパク質バランスとMPSが、ホエイや混合食よりも大きく高まる、というものだった。
方法
参加者
健康(医学的スクリーニングで心血管・代謝疾患がない)、若年(18〜25歳)、非肥満(BMI 30.0 kg/m²未満)で、レジスタンストレーニングの経験がある(過去6か月間、週2回以上)男女を対象とした。参加者には、研究期間中を通じて、非ステロイド性抗炎症薬、アルコール、ニコチン製品、カフェイン、サプリメントを控えるよう求めた。書面による説明と同意のうえで、12人の男性ボランティアが登録した(図1)。1人はデータ収集前にルールを守れなかったため除外され、1人はエネルギー不足期間を1回終えたあと個人的な理由で離脱した。このため、10人が全手順を終え、最終解析に含まれた(表1)。本研究は米国陸軍医学研究開発司令部の倫理審査委員会の承認を受け、ClinicalTrials.gov(NCT04004715)に登録された。研究者は、米国国防総省指令3216.02に定められた被験者保護の方針に従い、連邦規則集第32編第219部の規定に沿って研究を行った。
図1:ボランティアの登録と継続の流れ。(原文の図1)
| n = 10 | |
|---|---|
| 年齢(歳) | 21 ± 4 |
| 性別(男/女) | 8/2 |
| 体重(kg) | 77.6 ± 9.1 |
| 身長(cm) | 173.5 ± 8.9 |
| BMI(kg/m²) | 25.7 ± 1.7 |
| 最大酸素摂取量 VO2peak(mL/kg/分) | 46.4 ± 6.4 |
| デッドリフト 3RM(kg) | 127.7 ± 25.4 |
| デッドリフト 推定1RM(kg) | 137.4 ± 27.4 |
実験デザイン
ボランティアは、食事でつくる管理された5日間のエネルギー不足(必要エネルギー量の−30%)を3回、それぞれ14日間のウォッシュアウト(間隔)を空けて行う、ランダム化クロスオーバー試験を受けた。各エネルギー不足期間の直後に安定同位体の点滴試験を行い、運動後に「EAAを強化した少量のホエイプロテインアイソレート(EAA + W、タンパク質35 g)」、または窒素量をそろえた「ホエイプロテインアイソレート(WHEY)」もしくは「混合食に含まれるタンパク質(MEAL)」を摂ったときの、全身のタンパク合成(PS)、タンパク分解(PB)、正味バランス(NET)を調べた。運動と食後の回復期間全体の混合筋タンパク合成(mixed-MPS)も評価した。研究前の食事による交絡を抑え、過去の研究[9, 17–19]と条件をそろえるため、各エネルギー不足期間の直前には、体重を維持する個別の食事を3日間(ラン・イン期間)提供した。直前の運動がタンパク質代謝回転に与える影響[20]を抑えるため、食事介入の期間中はふだんの運動を禁止した。条件の順番は、偏りを避けるため乱数生成器(https://www.randomizer.org)でランダムに決めた。条件は半盲検とし、2種類のタンパク質飲料(EAA + WとWHEY)については、ボランティアと研究スタッフの全員が中身を知らないようにした。ただし、条件コードを作り飲料を用意した担当スタッフ1人は例外で、この人は主要評価項目のデータ解析・解釈には関わらなかった。
身体計測
ベースライン時に、身長計(Seritex社)で身長を0.1 cm単位で2回測った。体重は、一晩(8時間以上)の絶食と排尿のあと、裸でデジタル体重計(Taylor Precision Products社)により0.1 kg単位で、ベースライン時、各介入期間中は毎日、14日間のウォッシュアウト中は3日ごとに測った。体組成の変化を見るため、ベースライン時と各エネルギー不足期間の5日目に、8時間以上の絶食と排尿のあと、二重エネルギーX線吸収法(DXA;Lunar iDXA、GE Healthcare社)で脂肪量と除脂肪量[総重量 −(脂肪量 + 骨量)]を測った。
食事介入
研究前の食事と身体活動量は、3日間(平日2日・週末1日)の食事・活動記録で評価した。食事記録は栄養計算ソフト(Food Processor SQL v.11.3.2)で解析した。3日間のラン・イン食の1日の必要エネルギー量は、Harris-Benedict式[21]とMifflin-St Jeor式[22]の平均に、日常生活の活動と食事誘発性熱産生を考慮して1.3を掛けて求めた。管理栄養士が、主に米軍の戦闘糧食(MRE、メニュー37;Ameriqual社)に市販品(冷凍サンドイッチ、ヨーグルト、スナック菓子など)を加えた、個別の献立を作った。過去の研究[9]に合わせ、タンパク質は1.6 g/kg/日、炭水化物は総エネルギーの50〜55%とし、残りを脂質とした。30%のエネルギー不足は、タンパク質を1.6 g/kg/日に保ったまま、炭水化物と脂質を減らすことでつくった。すべての飲食物は0.1 g単位で量り、各ラン・イン期間とエネルギー不足期間の始めにボランティアに配った。ボランティアには、配られた飲食物をすべて食べ、空の包装を返すよう指示した。食べ残しは量り、摂取量の計算に反映した。水は自由に飲んでよいとした。14日間のウォッシュアウト中は研究前の食習慣と活動に戻るよう指示し、3日ごとに24時間の食事・活動記録をつけてもらった。
安定同位体の点滴試験
全身のタンパク質代謝回転とmixed-MPSを調べるため、5日間のエネルギー不足期間を終えた翌朝(一晩8時間以上の絶食後)に、安定同位体の点滴試験を行った(図2)。両腕の肘の内側または前腕に静脈カテーテルを入れ、片方から同位体を持続点滴し、もう片方から連続して採血した。採血する側の腕は、動脈に近い血液を採れるよう温熱パッドで温めた[23]。ベースラインの採血のあと、L-[ring-²H5]-フェニルアラニンとL-[3,3-²H2]-チロシンを、最初に一定量を入れてから一定速度で流す方法(プライム・持続点滴)で開始し、その後450分間続けた。点滴開始時には、L-[ring-²H5]-フェニルアラニンから生じるL-[ring-²H4]-チロシンの濃縮度を早く平衡にするため、L-[ring-²H4]-チロシンも一定量投与した。同位体はすべてCambridge Isotope Laboratories社から購入し、免許をもつ薬剤師が調製し、無菌・発熱物質なしと認証されたものを使った。
図2:点滴試験の流れ。筋生検と採血を、L-[²H5]-フェニルアラニンとL-[²H2]-チロシンのプライム・持続点滴と組み合わせ、エネルギー不足の間に全身運動のあとEAA + W、WHEY、MEALを摂ったときの全身タンパク質代謝回転と、運動から回復までの混合筋タンパク合成への影響を調べた。(原文の図2)
mixed-MPSを調べるため、各点滴試験で、片脚の外側広筋(太もも前面外側の筋肉)から1か所の切開で2回の筋生検を行った。筋生検はすべて無菌条件で、直径5 mmのBergstrom針を使って行った。組織は血液をふき取り、目に見える脂肪と結合組織を取り除いてから液体窒素で凍らせ、分析まで−80 °Cで保存した。1回目の筋生検は、全身運動の10分前(点滴開始から180分後)に行った。運動は、24分間の負荷運搬(LC)、続いて18分間のトラップバー・デッドリフトとボックス・ステップアップの交互実施、さらに24分間のLCで構成した。デッドリフトとステップアップの前後には4分間の休憩をとった。LCは、ベースライン体重の30%に相当するおもりを入れたリュックを背負い、トレッドミルを歩く運動である。ベースラインで測り、各ウォッシュアウト中に確認したVO2peakをもとに、低〜中強度(55 ± 5%)と中〜高強度(70 ± 5%)を1分ずつ交互に行うよう、速度と傾斜を調整した。決められた運動量をこなせない場合は、こなせるまでトレッドミルの速度を下げた。LCの内容は点滴試験の間でそろうよう最大限努め、全ボランティアのすべての試行でほぼ同じだった。トラップバー・デッドリフトとボックス・ステップアップは、1セットごとにデッドリフト5回の直後にステップアップ16回(片脚8回)を行い、合計約1分の運動とした。その後1分休んで次のセットに移り、合計9セット行った。回数の正確さと安全なフォームのため、スタッフが監督した。トラップバーの重量は、事前に測った3RM[24, 25]から推定した1RMの70%とし、すべての試行で同じにした。ボランティアは全員、ベースライン時に慣れのためのセッションを行い、LC運動の強度設定と、運動全体をやり遂げられることを確認した。運動終了後(270分)約5分以内に、ボランティアは次のいずれかを摂った:EAA + Wを200 mLの水に溶かして一度に(遊離EAAとホエイプロテインを独自に配合した製品;The Amino Company LLC社)、WHEYを200 mLの水に溶かして一度に(BiPro Elite ホエイプロテインアイソレート;BiPro USA社)、またはMEAL(チリビーンズの主菜、戦闘糧食MRE メニュー37;Ameriqual社;表2)。飲料には300 mL、MEALには500 mLの水を追加で与えた。試験食と追加の水は5分以内に摂った。その後ボランティアは残り180分の回復期間を安静に過ごし、その間も採血を続け、450分に最後の筋生検を行った(図2)。同じ日の2回目の筋生検では、すでに採取した部位から採らないよう、また局所の炎症を避けるため、針の向きを前回の採取部位から約5 cm離した[26–28]。生検する脚は点滴試験ごとに左右を入れ替え、3回目の点滴試験では1回目の切開から約3〜5 cm離れた場所を新たに切開した[27]。
| EAA + W | WHEY | MEAL | |
|---|---|---|---|
| タンパク質(g) | 34.7 | 34.7 | 34.7 |
| EAA合計(g) | 24.0 | 18.7 | 11.4 |
| 炭水化物(g) | 5.2 | 1.9 | 60.1 |
| 脂質(g) | 1.4 | 0.4 | 20.8 |
| エネルギー(kcal) | 172.6 | 150.3 | 566.9 |
| 1回分の重量(g) | 46.3 | 39.8 | 561.3 |
| EAAの内訳(EAA全体に対する%) | |||
| ヒスチジン | 7.7 | 3.9 | 6.7 |
| イソロイシン | 11.6 | 11.6 | 11.5 |
| ロイシン | 20.2 | 25.7 | 20.6 |
| リジン | 18.2 | 22.1 | 16.5 |
| メチオニン | 3.7 | 4.7 | 4.7 |
| フェニルアラニン | 10.7 | 7.2 | 12.7 |
| スレオニン | 14.8 | 9.9 | 10.8 |
| トリプトファン | 1.2 | 5.0 | 2.9 |
| バリン | 11.8 | 9.9 | 13.6 |
分析方法
血漿と筋の処理は過去の研究[9]と同じ方法で行った。血漿は10%スルホサリチル酸で除タンパクして遠心し、上清のEAA濃度を内部標準法と液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析(LC-MS/MS)で測った[29]。各アミノ酸の測定内変動係数は0.88〜2.80%だった。フェニルアラニンとチロシンの濃縮度は、tert-ブチルジメチルシリル誘導体化とガスクロマトグラフィー質量分析で測った[30, 31]。血清インスリン濃度はSiemens Immulite 2000XPIで測り、測定内変動係数は3.84%だった。筋サンプルは重さを量り、4%スルホサリチル酸で組織タンパク質を沈殿させ、均質化・遠心したのち、筋のペレット(タンパク質に結合した部分)を洗浄・乾燥し、6 N塩酸で105 °C・24時間加水分解した。筋結合タンパク質の濃縮度は、血漿と同じ方法で測った。
全身のPS・PB・NETとmixed-MPSの計算
全身のPSとPBの速度は、フェニルアラニンとチロシンの血漿への出現速度(Ra)と、フェニルアラニンから生じる内因性チロシンの割合をもとに計算した[19, 32]。非定常状態の動態計算の複雑さを避けるため、介入後の時間全体の総Raを計算した。フェニルアラニンとチロシンの血漿濃縮度の曲線下面積(AUC)を、開始から450分まで計算した(図3)。全身のタンパク質代謝回転は、フェニルアラニンの値を、タンパク質に占めるフェニルアラニンの割合で割って求めた。全身PBの計算では、総Raから、摂取したフェニルアラニン・チロシン由来の分を差し引いた[9]。(訳注:原文には具体的な計算式が掲載されていますが、ここでは省略します。要点は、フェニルアラニンが筋タンパク質の4%を占めると仮定して25倍してタンパク質量に換算していること、摂ったフェニルアラニンの吸収率をEAA + Wで99.5%、WHEYで99%、MEALで94%と仮定していること、食後はチロシン割合を肝臓での希釈を考慮して0.8で割っていること、NET=PS−PBであることです。)また、摂ったEAA 1 gあたりの合成刺激を見るため、PS・PB・NETの変化を、各試験食のEAA量(EAA + W 24 g、WHEY 18.7 g、MEAL 11.4 g)で割った値も調べた。
図3:点滴試験中の安定同位体の濃縮度(平均 ± SD、n = 10)。(原文の図3)
血漿のフェニルアラニンとチロシンの濃縮度の曲線(図3)は、各試験食で消化されたアミノ酸による生理的な揺れを表している。2種類の飲料ではどちらも濃縮度がほぼ平衡値に戻ったが、食前の値に完全に戻るには点滴時間が短すぎた。著者らはこの揺れを考慮してフェニルアラニン濃縮度のAUC、ひいてはPS・PB・NETを計算した。計算は2通りで行った。1つは450分の実測値を使う方法、もう1つは450分の値を平衡に戻った値(270分の値)で置き換える方法である。結果を比べると、NET・PS・PBはほぼ同じだった。これはおそらく、450分までに食後の生理的反応の大部分がとらえられていたためである。したがって、定性的な結論は実測値を使った場合と一致する。また、食後の点滴時間はMEALの消化・吸収の全体をとらえるにも短すぎたことを認める。全身タンパク質代謝回転の計算は、摂ったフェニルアラニンがすべて測定期間中に消化・吸収されたという仮定のもとで行っているため、総Raが人為的に大きくなり、MEALのPBは過小評価されている。ただし本研究の目的は、食後早い時期の急性反応を評価することであり、示したデータはこの期間に起こる全身タンパク質代謝回転を反映している。すべての結果は、この前提のもとで解釈すべきである。
mixed-MPS(分画合成速度、%/時)は前駆体・産物モデルで求めた[37]。運動前と運動後(180分〜450分)に採った筋のタンパク質結合L-[ring-²H5]-フェニルアラニン濃縮度の差を、180〜450分の血漿L-[ring-²H5]-フェニルアラニン濃縮度のAUC(前駆体濃縮度)で割り、1時間あたりの%に換算した。血液の揺れを正確に反映させるためのこの方法は、著者らの過去の研究[9]や他の研究[38]と同じである。また、摂ったエネルギー1 kcalあたりの合成刺激を見るため、mixed-MPSを各試験食のエネルギー量で割った値も求めた(原文ではEAA + W 150.3 kcal、WHEY 172.6 kcal、MEAL 566.9 kcalと記載)。
統計解析
統計的検出力とサンプルサイズは、NETを調べた過去の研究[19]をもとに決めた。EAA + W、WHEY、MEALの間でNETに18.9 g/180分の平均差、SD 2.0 g/180分、有意水準0.05を想定すると、差を検出するには最低10人が必要だった。このサンプルサイズは、mixed-MPSに0.01%/時の平均差、SD 0.01%/時、有意水準0.05を想定した場合にも、85%以上の検出力があった[38–40]。
主要評価項目は、EAA + W、WHEY、MEALを摂ったときの全身タンパク質代謝回転の反応と、運動+食後回復期間を通じたmixed-MPSの反応だった。副次評価項目は、EAA、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、インスリンの濃度の時間変化と、摂取後の増分曲線下面積(iAUC)だった。
参加者をランダム効果とした線形混合モデルで、条件(EAA + W、WHEY、MEAL)、状態(空腹時・食後)、その交互作用が全身タンパク質動態とフェニルアラニン水酸化に与える影響を調べた。全身タンパク質動態の変化量(空腹時+運動 → 食後+回復)とmixed-MPSについては、一元配置の反復測定分散分析(ANOVA)で条件の影響を調べた。条件間や状態間の差の大きさは、平均差(95%信頼区間)で示した。血漿のEAA、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、インスリン濃度については、二元配置の反復測定ANOVAで条件、時間、その交互作用の影響を調べた。これらのiAUC[41]も計算し、一元配置の反復測定ANOVAで条件間の差を評価した。体組成(ベースラインと各エネルギー不足期間の終わりの除脂肪量・脂肪量)、体重(各ラン・インの1日目と各点滴試験の日)、各エネルギー不足期間中の体重変化(ラン・イン3日目から点滴試験の日まで)、各点滴試験中のLCの運動強度の変化は、一元配置の反復測定ANOVAで調べた。各エネルギー不足期間中の体重減少は、対応のあるt検定で調べた。主効果や交互作用が有意な場合は、Bonferroniの事後比較を行った。主要評価項目のデータはShapiro-Wilk検定で正規性を示したため、パラメトリック統計を用いた。球面性はMauchlyの検定で評価し、必要に応じてHuynh-Feldt補正を適用した。試行の順番の影響は、全身PS・PB・NETについては線形混合モデル、MPSについては一元配置の反復測定ANOVAで調べ、順番の影響はないことを確認した。統計解析はすべてIBM SPSS(バージョン26)で行った。有意水準はP < 0.05とし、データは平均 ± SDで示した。
結果
各ラン・イン食の1日目の体重は同じだった(P = 0.76;表3)。体重はすべての条件でエネルギー不足の間に減り(いずれもP = 0.01)、減った量は条件間で同じだった(P = 0.81)。このため、点滴試験の日の体重は条件間で同じだった(P = 0.92)。除脂肪量には時点の主効果があった(P = 0.044)が、事後比較では、ベースラインと各エネルギー不足期間の終わりの間にも、エネルギー不足期間どうしの間にも差はなかった(いずれもP > 0.1)。脂肪量は、ベースラインと各エネルギー不足期間の終わりで同じで、エネルギー不足期間どうしでも同じだった(P = 0.73)。ラン・イン食とエネルギー不足食の内容、生じたエネルギー不足の大きさは、条件間で差がなかった(各変数でP > 0.1;表4)。
| ベースライン | EAA + W ラン・イン1日目 | WHEY ラン・イン1日目 | MEAL ラン・イン1日目 | EAA + W 点滴試験日 | WHEY 点滴試験日 | MEAL 点滴試験日 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 体重(kg) | 77.6 ± 9.1 | 78.5 ± 9.0ᵃ | 78.7 ± 8.8ᵃ | 78.3 ± 8.4ᵃ | 76.8 ± 9.4ᵇ | 76.9 ± 8.4ᵇ | 76.8 ± 8.5ᵇ |
| 体重の変化(kg) | — | — | — | — | −1.1 ± 0.5 | −1.2 ± 0.7 | −1.3 ± 1.2 |
| 除脂肪量(kg) | 55.6 ± 8.9 | — | — | — | 54.6 ± 9.1 | 54.5 ± 8.3 | 54.9 ± 8.6 |
| 脂肪量(kg) | 19.2 ± 5.6 | — | — | — | 19.3 ± 5.6 | 19.4 ± 6.2 | 19.0 ± 5.5 |
体重の変化は、ラン・イン3日目から点滴試験の日までの変化。異なる小文字(a、b)は、同じ条件内でラン・イン1日目と点滴試験日の体重に差があることを示す(いずれもP = 0.01)。
| ベースライン※ | EAA + W ラン・イン | WHEY ラン・イン | MEAL ラン・イン | EAA + W エネルギー不足 | WHEY エネルギー不足 | MEAL エネルギー不足 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 絶対量(kcal/日 または g/日) | |||||||
| エネルギー | 2875.5 ± 801.8 | 2325.6 ± 247.9 | 2351.2 ± 248.0 | 2316.2 ± 254.4 | 1624.4 ± 211.2 | 1623.7 ± 202.6 | 1623.1 ± 208.9 |
| タンパク質 | 118.1 ± 31.4 | 126.4 ± 16.5 | 128.1 ± 15.8 | 128.1 ± 15.8 | 125.7 ± 16.3 | 125.3 ± 15.1 | 126.2 ± 15.7 |
| 炭水化物 | 319.4 ± 86.8 | 312.3 ± 31.3 | 313 ± 31.3 | 309.3 ± 31.7 | 190.5 ± 28.5 | 190.8 ± 27.1 | 190.4 ± 27.4 |
| 脂質 | 104.0 ± 35.5 | 67.5 ± 8.3 | 69.5 ± 8.3 | 67.2 ± 8.8 | 41.8 ± 4.2 | 42.0 ± 4.7 | 41.6 ± 4.6 |
| 体重あたり(kcal/kg/日 または g/kg/日) | |||||||
| エネルギー | 36.9 ± 8.1 | 29.7 ± 1.8 | 30.1 ± 1.4 | 29.6 ± 1.6 | 21.0 ± 1.5 | 21.0 ± 1.3 | 21.0 ± 1.3 |
| タンパク質 | 1.6 ± 0.6 | 1.6 ± 0.1 | 1.6 ± 0.0 | 1.6 ± 0.1 | 1.6 ± 0.1 | 1.6 ± 0.1 | 1.6 ± 0.1 |
| 炭水化物 | 4.1 ± 1.0 | 4.0 ± 0.2 | 4.0 ± 0.2 | 4.0 ± 0.2 | 2.5 ± 0.2 | 2.5 ± 0.2 | 2.5 ± 0.2 |
| 脂質 | 1.3 ± 0.4 | 0.9 ± 0.1 | 0.9 ± 0.1 | 0.9 ± 0.1 | 0.5 ± 0.0 | 0.5 ± 0.0 | 0.5 ± 0.0 |
| エネルギー比(%) | |||||||
| タンパク質 | 17 ± 4 | 22 ± 1 | 22 ± 1 | 22 ± 1 | 31 ± 1 | 31 ± 1 | 31 ± 2 |
| 炭水化物 | 46 ± 7 | 54 ± 1 | 53 ± 1 | 53 ± 1 | 47 ± 1 | 47 ± 1 | 47 ± 1 |
| 脂質 | 33 ± 3 | 27 ± 1 | 26 ± 1 | 26 ± 1 | 23 ± 1 | 23 ± 2 | 23 ± 1 |
| エネルギー不足(%) | |||||||
| エネルギー | — | — | — | — | 30.3 ± 3.3 | 31.0 ± 3.6 | 30.0 ± 3.4 |
※ベースラインは3日間の食事記録からの推定値。1 kcal = 4184ジュール。
運動強度
運動の特性を表5に示す。VO2peakは、ベースライン、1回目のウォッシュアウト、2回目のウォッシュアウトの間で差がなかった(P = 0.11;表5)。LC中の運動強度(VO2で測定)も条件間で差がなかった(P = 0.82)。
| ベースライン | ウォッシュアウト1 | ウォッシュアウト2 | EAA + W 点滴試験日 | WHEY 点滴試験日 | MEAL 点滴試験日 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| VO2peak(mL/kg/分) | 46.4 ± 6.4 | 46.7 ± 5.9 | 45.3 ± 6.3 | — | — | — |
| 負荷運搬中のVO2(mL/kg/分) | — | — | — | 22.0 ± 2.8 | 22.1 ± 2.5 | 22.1 ± 2.8 |
| 推定1RMの70% | 212.0 ± 41.5 | — | — | 212.0 ± 41.5 | 212.0 ± 41.5 | 212.0 ± 41.5 |
「推定1RMの70%」の数値は原文の表のとおり(単位の記載なし)。
全身のタンパク質代謝回転とmixed-MPS
空腹時の全身PS、PB、NETは、条件間で差がなかった(いずれもP > 0.5;図4a〜c)。
図4:エネルギー不足の間に、WHEY、EAA + W、MEALを摂ったときの、空腹時+運動と運動後の食後回復期の全身タンパク合成(a)、タンパク分解(b)、正味バランス(c)、その変化量(d)、EAA摂取量あたりのタンパク合成の変化(e)、フェニルアラニン水酸化(f)(平均 ± SD、n = 10)。(原文の図4)
全身PSには条件×状態の交互作用(P = 0.001)があり、WHEYとEAA + Wでは食後のPSが空腹時より大きかった(それぞれP = 0.008、P = 0.001)が、MEALではそうではなかった(P = 0.6)。食後のPSは、EAA + WがWHEYより14.3 g/180分(10.6, 18.4;P = 0.001)、MEALより19.7 g/180分(15.8, 23.6;P = 0.001)大きく、WHEYはMEALより5.2 g/180分(1.3, 9.1;P = 0.006)大きかった(図4a)。全身PBにも条件×状態の交互作用(P = 0.011)があり、すべての条件で食後のPBは空腹時より低かった。食後のPBは、WHEYに比べてEAA + Wで−7.8 g/180分(−12.3, −3.2;P = 0.001)、MEALで−9.1 g/180分(−13.7, −4.5;P = 0.001)低かったが、EAA + WとMEALの間に差はなかった(P = 1.0;図4b)。NETにも条件×状態の交互作用(P = 0.001)があり、すべての条件で食後のNETは空腹時より増えた。食後のNETは、EAA + WがWHEYより22.3 g/180分(20.2, 24.4;P = 0.001)、MEALより18.4 g/180分(16.3, 20.5;P = 0.001)大きく、MEALもWHEYより3.9 g/180分(1.8, 6.0;P = 0.001)大きかった(図4c)。
全身PSの変化量は、EAA + WがWHEYより15.8 g/180分(9.8, 21.9;P = 0.001)、MEALより19.4 g/180分(14.8, 24.0;P = 0.001)大きかったが、WHEYとMEALの間に差はなかった(P = 0.09;図4d)。全身PBの減少量は、EAA + WがWHEYより6.3 g/180分(−11.5, −1.18;P = 0.02)、MEALがWHEYより7.7 g/180分(−11.9, −3.6;P = 0.002)大きかったが、EAA + WとMEALの間に差はなかった(P = 0.37;図4d)。その結果、NETの変化量は、EAA + WがWHEYより22.1 g/180分(20.5, 23.8;P = 0.001)、MEALより18.0 g/180分(16.5, 19.5;P = 0.001)大きくプラスになった(図4d)。また、NETの変化量はMEALがWHEYより4.2 g/180分(2.7, 5.6;P = 0.001)大きくプラスだった(図4d)。EAA摂取量あたりの全身PSの変化量は、EAA + WがWHEYより0.61 g/180分/g EAA(0.32, 0.90;P = 0.001)、MEALより0.77 g/180分/g EAA(0.48, 1.07;P = 0.001)大きかったが、WHEYとMEALの間に差はなかった(P = 0.32;図4e)。
空腹時のフェニルアラニン水酸化は条件間で差がなかった(いずれもP > 0.5)。食後のフェニルアラニン水酸化は、EAA + WとWHEYでは空腹時より大きかった(条件×状態、P = 0.001)が、MEALではそうではなかった(P = 0.5)。食後のフェニルアラニン水酸化は、EAA + WがWHEYより0.07 μmol/kg/分(0.04, 0.09;P = 0.001)、MEALより0.09 μmol/kg/分(0.07, 0.11;P = 0.001)大きく、WHEYはMEALより0.02 μmol/kg/分(0.00, 0.04;P = 0.044)大きかった(図4f)。mixed-MPSは、WHEY、EAA + W、MEALの間で差がなかった(P = 0.68;図5a)。エネルギー量あたりのmixed-MPSは、WHEYとEAA + Wの間に差はなかった(P = 0.063)が、それぞれMEALより0.00021%/時(0.00013, 0.00029;P = 0.001)、0.00027%/時(0.00022, 0.00033;P = 0.001)大きかった(図5b)。
図5:エネルギー不足の間に、全身運動と運動後の回復期にWHEY、EAA + W、MEALを摂ったときの混合筋タンパク合成(a:条件間に差なし、P = 0.68)と、試験食のエネルギー量あたりの混合筋タンパク合成(b)(平均 ± SD、n = 10)。(原文の図5)
アミノ酸とインスリンの濃度
血漿のEAA、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン濃度には、条件×時間の交互作用があった(いずれもP = 0.001)。EAA + WとWHEYでは、EAA、フェニルアラニン、チロシンの濃度が時間とともに上がり(いずれもP < 0.05)、330〜390分の間にピークに達した。EAAとフェニルアラニンのピーク濃度は、EAA + W、WHEY、MEALの順に高かった(いずれもP < 0.05;図6a、c)。チロシンのピーク濃度は、WHEY、EAA + W、MEALの順に高かった(いずれもP = 0.05;図6d)。ロイシン濃度は、EAA + WとWHEYで同じように時間とともに上がり(いずれもP < 0.05)、330〜390分の間にピークに達し、どちらもMEALより高かった(いずれもP < 0.05;図6b)。インスリン濃度は、すべての条件で上がり、270〜330分の間にピークに達した(時間の主効果、P = 0.001;図6e)。条件の主効果もあり(P = 0.04)、MEALのインスリン濃度はEAA + Wより高かった(P = 0.03;図6e)。MEALとWHEY(P = 0.26)、EAA + WとWHEY(P = 1.0)の間には差がなかった(図6e)。EAAとフェニルアラニン濃度のiAUCは、EAA + W、WHEY、MEALの順に大きかった(いずれもP < 0.01;表6)。チロシンのiAUCは、WHEY、EAA + W、MEALの順に大きかった(いずれもP < 0.01;表6)。ロイシンのiAUCはEAA + WとWHEYで同程度で、どちらもMEALより大きかった(どちらもP < 0.01;表6)。インスリン濃度のiAUCは条件間で差がなかった(P = 0.54;表6)。
図6:エネルギー不足の間に、WHEY、EAA + W、MEALを摂ったあとの血漿の必須アミノ酸(a)、ロイシン(b)、フェニルアラニン(c)、チロシン(d)、インスリン(e)の濃度(平均 ± SD、n = 10)。(原文の図6)
| EAA + W | WHEY | MEAL | |
|---|---|---|---|
| EAA(μmol/L/180分) | 208,148.1 ± 53,066.6ᵃ | 149,433.2 ± 40,539.0ᵇ | 4588.6 ± 18,990.5ᶜ |
| ロイシン(μmol/L/180分) | 54,054.5 ± 10,469.3ᵃ | 50,599.2 ± 11,178.9ᵃ | 2179.8 ± 3112.2ᵇ |
| フェニルアラニン(μmol/L/180分) | 10,617.8 ± 2737.5ᵃ | 1780.7 ± 1292.3ᵇ | 77.5 ± 1168.3ᶜ |
| チロシン(μmol/L/180分) | 5318.0 ± 1715.4ᵃ | 9543.2 ± 3118.5ᵇ | −421.4 ± 817.2ᶜ |
| インスリン(pmol/L/180分) | 7806.8 ± 5614.3 | 5992.1 ± 4042.2 | 6179.5 ± 5915.9 |
異なる小文字は、各項目で条件間に差があることを示す(いずれもP < 0.01、反復測定ANOVA)。
考察
本研究の目的は、健康な若年成人が5日間・30%のエネルギー不足を経たあと、異なるEAA・タンパク質の形態が運動後の全身タンパク質バランスにどう影響するかを調べることだった。運動と回復期の栄養補給を合わせたときのmixed-MPSの反応も調べた。主な結果は、運動後のNETがEAA + Wを摂ったときに最も大きかったことである。EAA + W後の食後NETが優れていたのは、末梢EAAの上昇がより大きかったこと、PSの増加が他の条件より大きかったことと関係していた。加えて、EAA + WではWHEYよりPBの減少が大きかった。NETに差があったにもかかわらず、mixed-MPSはすべての条件で同じだった。ただし、mixed-MPSを総エネルギー摂取量で割ると、EAA + WとWHEYは同化反応が大きく、これらの形態がMPSを保つうえで効率がよいことを示唆した。データは、良質なタンパク質そのものに遊離EAAを加えたものを摂ると、窒素量をそろえた他の形態に比べて全身タンパク質バランスが高まることを示している。したがって、この組み合わせのEAA・タンパク質の形態は、エネルギー不足という異化(分解方向の)ストレスの間に、体のタンパク質の損失を打ち消す有効な戦略になりうる。
EAA + Wを摂ったあとNETが著しく増えたことは、NETの変化は血中EAA濃度の上昇を反映する、という著者らの仮説を裏づける。この結果は、EAAを強化したホエイが、窒素量をそろえたホエイ主体の回復用製品よりもNETを大きくしたという著者らの過去の研究[42]を広げるものである。本研究では、EAA + W後のNETの増加は、PSの大きな増加とPBの同時の減少によるものだった。過去の研究[42, 43]から考えると、NETは主に血中のEAAのパターンによって決まっていた可能性が高い。EAA + Wの遊離EAAとホエイ由来の成分によって高まった末梢EAA濃度は、最初にPSを刺激するのに必要なEAAを供給し、さらに非必須アミノ酸がPSの持続的な増加を支える[44, 45]。加えて、内臓領域では、インスリンの作用とは関係なく、EAAが用量に応じてPBを抑えることが示されている[46]。最後に、EAA + Wの非必須アミノ酸の成分は、摂ったEAAが非必須アミノ酸に変換されるのではなく、PSにより多く使われることにも役立っていると考えられる。
興味深いことに、PBの減少はEAA + WとMEALで同程度だった。MEALでPBが大きく減ったのは、MEALのエネルギー(567 kcal)がEAA + W(173 kcal)より多かったことが一因と考えられる。エネルギー不足という異化ストレスの中では、MEALが供給した大量の外からのエネルギーによって、糖新生やエネルギー産生の材料となるアミノ酸を体内のタンパク質から供給する必要が減った可能性がある[47]。いずれにせよ、PSの刺激が大きかったため、NETはEAA + Wで大きかった。この刺激は、エネルギー不足の間の運動後の回復期に、全身タンパク質バランスを高めるうえで、このEAA・タンパク質の形態が有効であることを支持する。前述のとおり、今回の全身タンパク質代謝回転のデータは食後の期間に限られ、食後早期の急性反応として解釈すべきである。それでも、血漿EAA濃度は全身タンパク質代謝回転のデータを裏づけており、末梢EAA濃度が全身の動態の反応を決めていることを示している。したがって、MEALはEAA + Wに比べて、効率が悪く同化作用も小さいEAA・タンパク質の形態である。EAA量をそろえて比べるには、MEALの2倍以上の食事とエネルギー(約1193 kcal)が必要だったはずである。ただし重要な点として、全身タンパク質代謝回転をEAA摂取量で割った場合でも、PSの変化はEAA + Wで最も大きかった。
全身タンパク質代謝回転の測定に加え、著者らは、各形態に遊離EAAが含まれるかどうかがmixed-MPSに影響するかも調べようとした。EAA + Wで末梢EAA濃度が高まったにもかかわらず、運動と回復を合わせた期間のmixed-MPSは、どの条件でも同じように刺激された。末梢EAAの量に差があってもmixed-MPSに影響がなかったことは、エネルギー不足の間に運動後に遊離EAAを2つの量で摂ってもmixed-MPSの反応に差がなかった、という著者らの過去の研究[9]と一致する。本研究ではmixed-MPSがどの程度刺激されたかは示せないが、条件間に差がなかったのは、エネルギー不足の間には、すばやく吸収された外からのアミノ酸(EAAも非必須アミノ酸も)が、全身のアミノ酸とエネルギー(炭素骨格の供給)の必要を満たすため、中枢(肝臓や内臓領域)で優先的に使われるためと考えられる。エネルギー不足の間のこの代謝の優先づけは、MEALでは血中アミノ酸がかなり少なかったにもかかわらずmixed-MPSが各条件で同程度だったことにも表れている。通常の生理的条件(エネルギーが足りている状態)なら、MEALではmixed-MPSが低くなると予想されるだろう。代謝の優先づけは、mixed-MPSに差がないのに形態によって全身タンパク質代謝回転が変わったことにも表れている。絶対的なmixed-MPSは同程度だったが、重要な結果として、EAA + WとWHEYは総エネルギー摂取量あたりのmixed-MPSが大きかった。エネルギー密度の低い配合でより大きな合成反応が得られたことは、MPSを支えるうえで、これらの形態がMEALよりエネルギー効率に優れていることを示している。
過酷な訓練や戦闘作戦中に軍人が経験する、避けられないエネルギー不足が全身タンパク質バランスとMPSに与える悪影響を和らげる実用的な食事戦略は、まだ限られている。生理的ストレス下でタンパク質動態を高めるのに必要なEAA・タンパク質を最適に供給することに加えて、軍の作戦環境での栄養には、持ち運びやすく手軽に食べられるタンパク質の形態が求められる[15]。たとえば、現在の戦闘糧食は全部食べれば十分な栄養をとれるよう作られているが、食べる時間が限られ、持ち運べる食料も限られるため、摂取量が不足する[48]。軽量で移動しながら食べられる製品は、今の糧食に比べて、軍人が身につけて運ぶ重さを減らす現実的な手段になる。本研究の結果は、EAAを強化した少量のホエイの配合が、補給の面で実行しやすく手軽に摂れるうえ、全身のタンパク質同化を引き起こすEAA・タンパク質の形態であることを示している。全身の同化反応の高まり、効率のよいMPS反応、そして扱いやすい1回量と準備の手軽さは、EAAを強化したホエイが、移動しながら食べる補助食品として、生理的にも実用的にも利点があることを示している。軍の場面以外でも、このEAA・タンパク質の形態は、計画的なエネルギー不足の期間にタンパク質の同化を保ちたい階級制競技のアスリートに役立つだろう。
結論
30%のエネルギー不足の間、EAAを強化したホエイは、窒素量をそろえたホエイアイソレートや混合食に比べて、NETを高めた。NETはPSの増加とPBの抑制によって達成された。また、EAAを強化したホエイのmixed-MPSは他の条件と同程度だったが、同程度のMPSをより少ないエネルギーで得られたという意味で、MPSの効率はよかった。これらの結果は、EAA含有量が多く、末梢EAA濃度をすばやく持続的に上げるタンパク質含有食品の形態が、摂取不足という異化ストレスの間に、全身のタンパク質の状態を高め、MPSを効率よく支えうることを示している。
謝辞・その他(原文より)
免責:本論文の意見・主張は著者個人の見解であり、米国陸軍・国防総省の公式見解ではない。商業団体名や商品名の記載は、陸軍がその製品・サービスを公式に推奨するものではない。資金:米国陸軍医学研究開発司令部。資金提供者は研究デザイン、データ収集・解析・解釈、報告の執筆、投稿の決定に関与していない。倫理:米国陸軍医学研究開発司令部の倫理審査委員会が承認(IRB# M-10785)、全参加者から書面による同意を取得。利益相反:著者のうちRRW(Robert R. Wolfe)は「筋肉の成長・修復・維持を刺激するための組成物」の米国特許の発明者で、Essential Blends LLC社とThe Amino Company LLC社(EAA + Wの製品を提供した会社)の株主である。RRWはデータ収集・解析に関わらず、論文原稿としてまとめられるまで全データについて盲検化されていた。他の著者に利益相反はない。データは合理的な依頼があれば責任著者から入手可能。著者貢献・略語一覧・参考文献は原文を参照。
完全な図表・参考文献は原文(J Int Soc Sports Nutr)またはPMC全文をご覧ください。ライセンスはCC BY 4.0。
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出典・ライセンス
Jess A Gwin, David D Church, Adrienne Hatch-McChesney, Jillian T Allen, Marques A Wilson, Alyssa N Varanoske, Christopher T Carrigan, Nancy E Murphy, Lee M Margolis, John W Carbone, Robert R Wolfe, Arny A Ferrando, Stefan M Pasiakos. Essential amino acid-enriched whey enhances post-exercise whole-body protein balance during energy deficit more than iso-nitrogenous whey or a mixed-macronutrient meal: a randomized, crossover study. J Int Soc Sports Nutr 2021;18:4. 公開日:2021年1月7日. DOI: 10.1186/s12970-020-00401-5
原論文は CC BY 4.0(クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際)のもとで公開されています。このページは原論文を運営者が日本語に翻訳したもので、翻訳にあたって変更を加えています(日本語への翻訳、図の省略と原文へのリンク、補足資料・略語一覧・参考文献の省略、見出しの調整、訳注の追加)。要約・3行まとめ・活かし方は運営者が独自に書いたもので、原著者・出版社が内容を保証・推奨するものではありません。翻訳の誤りがあれば、原文が優先します。